父が亡くなり、兄弟2人が相続人となります。
基本的には2分の1ずつ、弟が祭祀継承するため必要経費として多少の増額をとの話になり、分割協議書を作成しようとしています。
兄は自営業のため父に援助をしてもらっていたようで、預金通帳に会社宛に振込が数回ありました。
兄本人は借入金としていたようですが、返金された形跡はなく、このまま贈与として算定できますか?
また、過去何年までが有効でしょうか?
【誰に対する何なのか?】
今回の質問は、相続人の一部に、死亡された人(被相続人)から生前贈与などがあった場合に、遺産分割にどう影響するのかという点に関するもののようですが、その前に大きな問題があります。
父は、兄の経営する「会社宛」に振込をしたというのですが、仮にその会社が株式会社などの法人である可能性があります。
またその振込が貸付なのか贈与なのかによっても扱いが異なりますので、これらを場合分けして考える必要があります。
【会社に対する貸付の場合】
父が会社に対して貸付をした場合には、貸金が返還されていないのですから、父は会社に対して貸金返還債権を有します。
この債権は遺産に含まれますので、この債権を相続人間で分割するということになります。
従って、あなたは貸付額の半額について兄に対して支払いを請求することができます。
なおこの場合、貸付債権は、10年の消滅時効にかかりますので注意が必要です。
【会社に対する贈与の場合】
父が会社に対して贈与をしていた場合には、あなたは振り込まれた金額の全額についてなんら返還請求をすることはできません。
しかし、会社に対する贈与が実質的には兄に対する贈与であると判断できる場合もあるかもしれません。
その場合には兄に対する贈与として特別受益だと評価されるかもしれません。
【兄に対する貸付の場合】
法人である会社ではなく、兄に金銭を援助していたのなら、それが返済を約束したものかどうかによって、扱いが異なります。
返済の約束をしたものであれば、父から兄に対する貸付金であり、貸金債権として、遺産分割の対象となります。
兄弟の2人が遺産分割する場合には、あなたは兄に対し、この貸金の2分の1の支払を請求できます。
【兄に対する贈与の場合】
他方、返済の約束がなかった場合は貸金ではなく、贈与になりますが、この贈与が「生計の資本として」なされたものであれば、遺産分割の計算上、特別受益として相続財産に組み入れられます。
多額の場合には、生計の資本として扱われる場合が多いです。
なお、兄が特別受益を加えて計算した遺産の2分の1以上の贈与を受けていた場合、兄は現存する遺産を取得することはできないだけであり、2分の1を超える部分をあなたに支払う必要まではありません。