【質問のまとめ】
① 被相続人と相続人の一人が建築費用を折半して建てた家があります。
被相続人の生前、その家には、相続人が一人で住んでいました。
相続人に特別受益がありますか?
② 被相続人の家に相続人の一人が同居して、
相続人の生活費の多くを被相続人が負担していました。
相続人に特別受益がありますか?
【ご質問内容】
遺産に不動産が含まれています。
土地は被相続人名義、家屋は建築費を被相続人と相続人Aが半分づつ負担し共同名義で相続人Aが居住しています。
被相続人は相続人Bと同居しており、Bは生活費として月に3万程度負担していました。
上記の場合、相続人A・Bともに特別受益になりますか?
また共同名義の家屋の現在の価値の半分が遺産の対象として含まれるのでしょうか?
特別受益と遺産との場合では相続分に価値的な違いが出てくるのでしょうか?
【Aの特別受益は居住利益】
わかりやすくするために、被相続人がお父さん、AとBはその息子という前提で話をしていきます。
お父さんとAとがそれぞれ建築費用を出して建築し、共有である家を、Aがお父さんから(半分)借りて住んでいたというケースです。
Aの特別受益は、その家屋が共有である(つまり、家屋の半分はお父さんのものである)にもかかわらず、家屋の全部を使用している利益(正確に言うと、お父さんの持ち分を利用している点についての利益)と思われます。
具体的には、その家の家賃相当額の半額(正確には土地利用料も考えられるが)を免除されたものとして、これを特別受益だと主張することになるでしょう。
【同居者の生活費の部分は特別受益が減殺される】
Bについては、特に記載されてはいませんが、お父さんの家に無償で同居していたとすれば、家賃相当額が特別受益であるとの考えもあり得そうです。
しかし、親と同居の場合には、扶養義務のある親子関係の同居であること、Aのような独自の居住状況ではないことや、親の面倒や介護をしていた等の理由からか、家賃相当額が特別受益になると主張されることは少ないようです。
むしろ、このBのようなケースでは、親の介護をした等とかを根拠として、特別寄与等の主張が出てくる可能性さえあります。
次に、Bは生活費を3万円出しているとのことですが、現実の生活費よりかなり低額であっても、被相続人と相続人が親子の関係であればお互いに扶養義務を負っていますので、特別受益とならない場合も多いです(この点は当ブログ【Q&A №254】母の生活費負担と特別受益・寄与分もご参照ください)。
参考までに言えば、過去の裁判例では月十数万円程度の生活費提供でも特別受益にならないとしたものがあります。
【建物評価額の半額は遺産に組み込み】
最後に、お父さんの有する共有持ち分は被相続人の遺産になります。
おそらく本件のような場合には、Aが居住している家(正確にいうと被相続人の土地とその土地上の建物の共有持ち分)を相続で取得し、Bは被相続人と同居している家を相続で取得するということになりますが、それぞれの価額に差があれば、他の預貯金の相続で調整するか、代償金の支払いで調整することになるでしょう。
評価基準時ですが、遺産の場合には遺産分割時点となります。
特別受益の場合の評価時点は不動産等については、特別受益のあったときではなく、相続開始時とするというのが裁判例です。