今年の8月に被相続人である母が亡くなりました。
相続人は3人おり、それは私と私の姉(母の死亡前に死亡)の子供2人です。私の姉は生前に母から1000万以上の生活援助を受けていました(約20年前から)。
母曰く、服飾品の購入や家屋の購入における一部負担(100万)、子供の結婚資金(300万)、配偶者の自己破産のための弁護士費用等々に充てたのだと。
こうした姉の行為を見かねた母は、金銭に関する一連の事実を姉の子供、つまり今回の相続人にも伝え、彼らもその事実を了解していました。
その時のやりとりはテープに録音してあります。
しかしながら、母は昔気質の人間なので、こうしたことを身内の恥といい、金銭に関する契約書は残していません。
そんな中で、この度の母の相続が発生しました。こうしたものは特別受益となりますか?
なるのであれば、他の2人の代襲相続人に持ち戻しをしてもらおうと考えておりますが、それは可能でしょうか?
(因みに、代襲相続人は自分の母親が母に対して借金をしていることは認めています。)
記載内容 結婚資金 貸金債権 相続人以外への贈与 弁護士費用 生活費援助 代襲相続人の特別受益
【貸金は遺産であり、特別受益にならない】
質問の中で、「代襲相続人は自分の母親が母に対して借金をしていることは認めています」との記載があります。
これを前提にすると、被相続人であるお母さんがお姉さんに対して貸金債権を持っていることになります。
貸金債権は遺産の一部であり、あなたと2人の代襲相続人が相続します。
ただ、お姉さんが死亡しているので、その貸金債務はお姉さんの債務の相続人である2人の子供が2分の1の割合で債務負担することになります。
そのため、あなたは、お母さんから貸金債権の2分の1を相続したとして、その2人の子供に貸金請求をすればよく、特別受益の問題は発生しません。
【相続人以外の者への贈与と特別受益】
貸金債権ではないとした場合には、次の点が問題となります。
今回の質問では、子供の結婚資金300万円、お姉さんの夫に対する弁護士費用の負担が問題とされています。
これらの負担が子供やお姉さんの夫に対する贈与と仮定すると、相続人はお姉さんですので、相続人以外の他人への贈与になり、お姉さんの特別受益にあたらないのではないかという点が問題になります。
結論から言えば、相続人以外の人への贈与は原則として特別受益にはなりません(この点については過去のブログ(Q&A 324 )および判例散策(「【判例散策】昭和55年5月24日 福島家庭裁判所白河支部」参照)を参照ください)。
なお、代襲相続の原因発生(お姉さんの死亡)以後に代襲相続人が結婚資金の贈与を得ている場合には特別受益になる可能性がありますが、質問では代襲相続以前に結婚資金を与えているようですので特別受益にならないと思われます。
又、披露宴の費用などは、社会通念上相当な範囲を超えない限り特別受益にあたらないという考え方もあることをお知らせしておきます。
【生活費援助は特別受益にはなりにくい】
生活費の援助として毎月、お金をもらっていたような場合にはどのように考えればいいかという問題点もあります。
総計で1000万円以上ということですが、そのうち家屋購入に100万円、子供結婚資金に300万円、お姉さんの夫の弁護士費用の負担(通常、自己破産申立なら30万円程度)を控除すると、残額は500万円から600万円程度になるでしょう。
仮に上記控除後の残額を600万円とし、生活費を20年間、毎月均等にもらっていたとすると、600万円÷240ケ月=2万5000円になり、月額では2~3万円程度をもらっていたことになってしまいます。
この程度の金額の生活費の援助なら、親族間の扶養義務の履行として判断される可能性が高く、特別受益とされる可能性は低いでしょう。
【結局、貸金として請求するのが一番、有利な方法】
以上に述べたところを整理すると、結局、お母さんからのお姉さんらへの金銭交付については、全てをお母さんからのお姉さんへの貸金として考え、これが遺産の一部として承継するという前提で遺産分割協議をするのがあなたにとって一番有利な方策になります。