【質問の要旨】
先に作成された遺言書…押印あり、直筆
後に作成された遺言書…押印なし、直筆
この場合、どちらの遺言書が有効か?
【ご質問内容】
1通目の遺言書には押印がなく無効であると判断されました。(本人直筆作成)
2通目の遺言書がありました。それも直筆での作成であり、日付はその1通目の遺言書よりも、約1か月前に作成されたもので、その遺言書には押印がしてあります。
その場合、2通目の遺言書が有効になるのでしょうか。
【押印のない遺言書は無効です】
遺言する本人が直筆で作成する遺言書を「自筆証書遺言」といいます。
自筆証書遺言は、その全文、日付、氏名を遺言者本人が自筆で書き、印鑑を押さなければ、法律上の遺言書としての効力はありません(ただし、民法が改正され、平成31年1月13日以降に作成された遺言については、遺言書のうち、財産目録については自筆要件が緩和されています→相続法改正ブログ「自筆証書遺言の方式緩和」参照)。
1通目には押印がないということですので、遺言書が有効になるための法律上の要件を満たしておらず、その効力はありません。
2通目の遺言書には押印があるということですので、遺言書の全文、日付や氏名が自書されているのなら、法律上は有効な遺言となります。
通常、遺言書が2通あった場合、後に作成されたものが、遺言書としての効力を持ちます。
そのため、本件の場合は、遺言書2通のうち、後に作成された1通目の遺言書が有効になるはずですが、その遺言書には押印がなく、要件を欠いているということですので、もう1通の要件を充たした遺言書が効力を持つのはやむをえないでしょう。
【1通目の遺言書の内容にしたい場合は分割協議で・・】
なお、有効な遺言書があっても、相続人間の全員が同意して、遺言書とは異なる内容の遺産分割協議をすることもできます。
押印のない1通目の遺言書の内容を実現したいというのなら、相続人間で協議されるといいでしょう。