【質問の要旨】
亡き妹にお金を預けたという念書は有効か?
【ご質問内容】
先日、伯母がなくなりました。
夫は故人で、子供はいません。
伯母は生前、万が一の事を考えて、実の妹にお金を預けていました。
ところが、その妹が伯母よりも1年前に他界し、妹の息子2人が伯母が預けていたお金を母親(妹)の遺産だと思い相続してしまったのです。
この時、伯母は既に認知症で、妹の死を理解できる状態ではありませんでした。
私の母は、伯母の弟(故人)の配偶者にあたりますが(実質的に伯母の面倒を見ていました)、まだ伯母が元気な時に、義姉(妹)にお金を預けた事を聞いて、万が一の為
に、義姉(妹)から「預かりました」という念書を書いてもらっていたのです。 そこで、その義姉(妹)が亡くなった時に、2人の息子に念書を見せたところ「これは母の字では無
い」と言われ、うやむやにされてしまいました。
その1年後、伯母は他界。
遺産相続の協議をしなくてはいけません。
この念書は有効となるでしょうか?
その為には筆跡鑑定等が必要でしょうか?
ご教示、宜しくお願いいたします。
【相続関係の整理】
少し人間関係が複雑ですので、伯母さんのことを「被相続人」、伯母さんの妹を「妹」、妹の息子(2人)を「甥」と言います。
被相続人の配偶者が死亡しており、被相続人のご両親なども死亡されているでしょうから、相続人は妹と亡くなったあなたのお父さん(他に被相続人の兄弟姉妹がいないことを前提としています)になります。
ただ、妹及びあなたのお父さんが被相続人より先に死亡していますので、甥及びあなた(兄弟姉妹がいればその方も)が代襲相続しますので、相続人は甥2名とあなた(兄弟姉妹がいればその方も)になります。
【お金を預けていたことの証明が必要】
被相続人が妹にお金を預けていたということを主張するなら、
①被相続人から妹さんにお金が渡った ②そのお金は贈与ではなく、預けたものである との2点を証明する必要があります。
今回の質問の場合、妹の預かりましたとの念書が作成されているようですが、甥が争うようであれば、本当に妹が作成したものであることを証明するために筆跡鑑定が必要になる場合もあります。
ただ、念書に加えて、現実にお金が被相続人から妹に動いているということがわかれば、預り金だということがより強く証明できることになります。
被相続人の預貯金口座から妹の口座への送金があるかどうか、またそのような送金はないが、問題の時期に出金があるということであれば、お金が妹に渡ったことの証明が容易になります。
そのため、被相続人の預貯金の取引履歴を取り寄せは必要不可欠な作業と言っていいでしょう。
【弁護士に法律相談することも考える】
念書が有効かどうかは、前項に記載した事情に加えて、念書の記載内容と入出金履歴が合致するかどうか、また、妹の収入や資産状況から見て、妹自身の財産といえるかどうかなどを含む諸般の事情も考慮しての総合的な判断になりますので、質問の記載だけからでは判断しかねます。
今後、甥らと協議をしても、妹の遺産についての遺産分割が完了していること、甥らが預かり金を否定していることを考えると、甥らが被相続人の遺産とは認めないと頑張る可能性も高いでしょう。
そのため、場合によれば、訴訟も視野に入れる必要があるでしょう。
もし可能であれば、甥らと協議をする前に、相続に詳しい弁護士に予め相談され、念書や被相続人の取引履歴を見てもらった上で、訴訟になった時の勝訴の可能性を検討してもらうといいでしょう。
勝訴の可能性が少ないということであれば、適当なところで甥らと妥協するという選択肢も考えてもいいでしょう。