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実例Q&A

不正出金とじん肺訴訟【Q&A №664】

2019年10月24日

 

【質問の要旨】

・相談者の祖父が死亡。相続人は、相談者の母とその弟。

・相談者の母の弟が、祖父のお金を不正に引き出していた。その分を返還させることは可能か?

・祖父の死因はじん肺であるが、母の弟の委任状だけで訴訟できるか?

・その場合、勝訴したら、慰謝料は弟がすべて受け取るのか?

・祖父の財産を母が受け取るような方策はあるか。

【ご質問内容】

先日祖父が亡くなり、母とその弟(祖母は亡くなっており受け取りは姉弟の2人)で遺産を分けようとしたところ祖父の生前に弟がお金を引き出していたことが判明。

その詳細はお願いしても見せてもらえず行方が不明。

世話していたのは自分たちだから使っても当然だとの言い分でした。弟が着服していた分を支払わせることは可能でしょうか。

また、祖父はじん肺が原因で亡くなったため、弟が訴訟を起こすと言っているのですが弁護士への代理依頼の委任状は弟のものだけで訴訟は可能なのでしょうか。

勝訴して慰謝料が支払われる場合、弟が全て受け取ることになるのでしょうか。

どうにかして祖父の生前の財産を母に渡るようにできないでしょうか。

弟の後ろには税理士も弁護士もいるとのことでどう動いてよいのかわからず教えて頂きたいです。

 

(くっく)

 ※敬称略とさせていただきます。

 

【母は弟に対して、生前引出分についての請求ができる】

遺言書がない場合は、法定相続人は法定相続分に応じて遺産を相続します。

今回のように、子が2人のケースでは、あなたの母とその弟が2分の1ずつ相続するということになります。

生前に、弟が祖父の口座から無断で出金していたのであれば、祖父は弟に対して、損害賠償請求権を持っていたということになります。

祖父死亡後は、祖父の持っていた損害賠償請求権は、あなたの母にも相続されますので、生前の引き出し分についても、母の法定相続分(2分の1)の限度で、母は弟に対して請求することができます。

【生前引出分については、調査と分析が必要】

ただ、母が弟に対して、損害賠償請求をするためには、母の側で、弟が祖父の口座から多額の出金をしたということを証明する必要があります。

具体的には、

① 預貯金口座からの多額の出金の存在

② 出金した人はだれか

③ 出金した金員を誰が取得し、何に使ったのか

の三点を主張・立証しなければなりません。

このうち、①については、祖父の口座の取引履歴を取得すれば、明らかになります。

取引履歴は、相続人であれば、最長で過去10年分遡って取得することができますので、早急に取り寄せ手続きをされるとよいでしょう。

また、②及び③に関して、今回弟は、「世話していたのは自分たちだから使っても当然だ」などと言っているとのことですので、出金の事実をある程度認めているのかもしれませんが、いつ言い分を変えてくるかわかりません。

そのため、預貯金の払戻伝票などを取り寄せし、筆跡などから、弟が出金に関与したという証拠をできるだけ集める必要があります。

ATMで引き出されている場合には、筆跡などは残りませんが、取引履歴を見ることにより、どこに置かれた機械で出金したのかがわかり、出金者の特定に役立ちます。

弟が出金したことが判明すれば、③の取得者と使途については、出金した弟が、自分ではないというのならその主張立証をする責任があります。

【意思能力の主張のため、カルテの取り寄せも考える】

無断出金の証明には、カルテが役立つことがあります。

祖父はじん肺で亡くなられたとのことですので、入通院された病院や医院のカルテを取り寄せましょう。

カルテの記載内容や看護日誌の内容等により、祖父の意思能力が判明し、その程度によっては、本人には出金ができなかったと主張立証できる可能性があります。

また、祖父が入院していた時期に多額の出金があれば、それも弟が関与したと主張できる可能性があります。

【じん肺の訴訟は、弟だけでも可能】

次に、弟が弁護士に依頼して進めようとしているじん肺訴訟ですが、これも、祖父が国や企業に対して有していた損害賠償請求権を母や弟が相続して請求するものです。

そのため、母と弟は、祖父が有していた損害賠償請求権の2分の1ずつをそれぞれ有しており、それぞれが国や企業に対して、2分の1の損害賠償請求をすることができるということになります。

したがって、弟は、自分の相続分である2分の1については、一人で訴訟をすることが可能であり、その分だけ弁護士に依頼することももちろん可能です。

その場合、弟がした訴訟の結果には、弟だけが縛られますので、勝訴すれば、祖父の損害額の2分の1を弟だけが受け取る権利を持ちます。

反対に、弟が敗訴したとしても弟だけがその結果に縛られます。

そのため、母としては、弟のした訴訟の結果にかかわらず、別途自分の相続分2分の1について訴訟をすることができます(もちろん、弟が敗訴した場合には、母は訴訟をしないという選択もできます)。

【母が祖父の財産を受け取れるように、今母がすべきこと】

以上の通り、母としては、調査をした上で、

① 弟に対する損害賠償請求(無断引き出し分)

② 国や企業に対する損害賠償請求(じん肺)

をすべきです。

それ以外にも、不動産、預貯金、有価証券等をきちんと調査して、残された財産については、弟との間で遺産分割協議をすべきです。

また、調査する中で、弟が生前に祖父から贈与を受けていることがわかれば、それについては特別受益として遺産に持ち戻して計算することにより、母の受け取り額が増額できることもあります。

いずれにせよ、専門的な知識が必要ですし、調査すべき内容も請求すべき内容も多岐にわたりますので、お近くの弁護士に相談されることをお勧めします。

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