共働きで 家のローン・生活費は 全て父が出し 母の収入は全て母名義で預金されていた場合・・・相続の対象にはなりませんか。
【生活費を分担していた夫婦と比べれば】
お父さんの収入が生活費に充てられ、お母さんは自分の収入を預金として貯めておくことができたというケースです。
ご相談の趣旨は、お母さん名義の預金は、結局、お父さんの負担によりできた預金ではないか、その分をお父さんの遺産ということで対処できないかということです。
【母の財産であり、父の遺産にはならない】
この点、お父さんが自分の収入を、お母さん名義で預金していたというのであれば、実質的にはお父さんの遺産であったといえる可能性があります。
今は銀行の扱いが厳しくなりましたが、昔は家族名義を借用した預金(借名預金などと呼ばれていました)が多く見られた時代がありました。
その場合、実質的にそのお金を入金した元手は誰のお金だったのか(≒誰の収入だったのか)を主張立証することで、お母さん名義の預金だがお父さんの遺産であると扱うことができる余地がありました。
しかし、本件では、お母さんが自分の収入を自分名義の預金口座に預け入れたということですので、お母さんの財産であり、お父さんの遺産になる可能性はないでしょう。
【特別受益にもならない】
お父さんが生活費を負担したため、お母さんが自分の収入を全て預金に回すことができたということであれば、お母さんに特別受益があり、その経費負担分を遺産に持ち戻せないかという疑問が出てきます。
しかし、夫婦の一方が生活費を出した場合でも、その金額が特別に多額ではない場合―たとえば月額10数万円程度―であれば、夫婦の扶助義務の実行であるとして特別受益にはならないと思われます。