※扶養能力がないのに遺留分と養育費は相殺されるのか?【Q&A №501】に関する再質問
【質問の要旨】
地裁の遺留分減殺事件で養育費を決定できるのか
【ご質問内容】
子供に対して地裁で遺留分(1250万円)を求めて本人訴訟中なるも、子供(義母と同居し現在は社会人)は、大学卒業までの生活費や学費などの養育費(1600万円)との相殺を要求。
私はその当時から現在まで病気で収入がなく、また数千万円の借金があるので扶養能力はなく、子供は充分な遺産(5000万円)
があるので要扶養状態にはない。
和解交渉でこのことを主張するも、裁判官は、(法律的根拠は示さず)遺留分の権利だけを主張して扶養義務は果たさないのはおかしいとして、私が遺留分をもらえば、そこから子どもが立て替えた養育費を払うように強く要請。
私は、父子間の養育費は家裁の専権事項なので、本裁判では遺留分の決定をし、養育費については被告が調停申立をすべきと主張するも、裁判官は被告から相殺の要求が出ているので、地裁で養育費の決定ができると拒否。
そこで質問なのですが、
(1)本当に地裁で養育費を決定できるのか。
あるいは、和解を成立させんがために私へ譲歩を迫るだけであり、判決では養育費については盛り込まれない可能性が高いと思われるか。
(2)判決で養育費と相殺された場合、それを理由に控訴しても却下となる可能性が高いか。
(3)もし家裁で養育費が決定される場合は、養育費が決まった後に地裁で遺留分と相殺して支払われるのか。
または、地裁では遺留分が確定し、家裁で養育費が確定して,相殺ではなく個別解決になるのか。
当相談では、原則、再度の質問には回答しないことになっています。
ただ、お困りかもしれませんので、簡単にコメントをします。
この程度でご了解ください。
【再質問】
地裁の遺留分減殺事件で(家裁の専権事項である)養育費を決定できるのか?
【回答】
養育費の決定は家裁で決定すべきことです。
そのため、地裁の判決主文中で養育費が決定されることはありません。
ただ、判決理由中で、遺留分額を減少する際の事情として未払養育費額を考慮することはできないかという問題がありえます。
しかし、家裁の専権事項である以上、理由中であっても、養育費額の認定はできないというべきでしょう(この点に関する参考裁判例としては、婚姻費用についてですが、同趣旨の判例がありますので末尾に記載しておきます)。
但し、当事者が和解提案する際の事情として未払い養育費を持ち出す、あるいは裁判所が和解案を出す際に未払い養育費を考慮して解決金額を提示するという程度なら特に問題ないでしょう。
その点を考慮すると、あなたに譲歩をせまる材料として裁判所は養育費問題に言及しているというところでしょうか。
【再質問】
判決で養育費が考慮された場合、それを理由に控訴することが可能か?
【回答】
本来考慮すべきではない事項を考慮しているのであれば、それは控訴理由になり、原判決の取消事由となると思われます。
【再質問】
家裁の養育費と地裁の遺留分との関係
【回答】
地裁としてはいつまでも判決を延期するわけにはいきませんので、養育費は別途解決してくださいとして、遺留分のみについて判決する可能性が高いと思います。
【参考判例】
婚姻費用の分担については、専ら家裁が審判すべきものであって、地裁は抗弁に対する判断としても、婚姻費用の分担を定めることはできない(京都地判昭和32年10月17日)。