勤務地の関係で、結婚してから夫とは同居をしておらず、養ってももらっていません。
お互い一人暮らしのような状態です。
このような場合でも、別居中に私が先に亡くなった場合、夫に遺留分を主張する権利や受け取る権利があるのでしょうか。
夫は主張してこないとは思っていますが、私自身は「夫にお金が渡る=夫の死後は夫の家族に渡る」ということで、夫の家族や夫には1円も渡したくないのが本音です。
自分の親、兄弟(その子供)のために役に立てたいのです。
遺言書には「自分の血縁関係のある者に相続させたい」「共有財産がない」「婚姻期間が短い(2年)」ということは書いていますが、遺留分については受取人次第という部分もあるようで、裁判まではしないと思いますが、遺留分を夫に渡さない方法はないものでしょうか。
【別居していても夫には遺産が行くし、遺留分も請求できる】
《勤務地の関係で、結婚してから夫とは同居をしておらず、養ってももらっていません。お互い一人暮らしのような状態です》ということであっても、戸籍上、夫であれば、あなたの遺産を夫は取得します。
又、あなたが遺言書でご主人以外の人に遺産を相続あるいは遺贈した場合、ご主人としては、遺留分請求(主張)をすることは法的には可能ですし、あなたの遺産を受け取る権利もあります。
【遺留分請求をさせない方策としては遺留分放棄の審判申立をする】
ご主人に遺留分放棄をさせない一番確実な方法は、生前の《遺留分》の放棄をさせることです(民法1043条。条文は末記のとおりです)。
あなたとご主人は互いに法定相続人という関係にあり、ご主人が死亡すればあなたがご主人の遺産を受け取ることにもなります。
ご主人としても、あなたに遺産を渡してたくないというのであれば、互いに遺留分を放棄しあうということで合意されてはいかがでしょうか。
ただ、生前の遺留分放棄については、次の点をご注意ください。
① 家庭裁判所の許可を受ける必要があります。
裁判所に申し立てをした場合、大阪家庭裁判所の扱いとしては、まず放棄する人に対して書面で、放棄の意思があるかどうかを確認し、場合によっては、裁判所に出頭を求め、遺留分放棄する人から事情を聞くこともあります。
あなたの場合には夫婦関係を説明し、互いに遺留分放棄をするのだという回答であれば、書面審査で放棄が認められる可能性があるでしょう。
② 又、裁判所が認めるのは、《遺留分》の放棄であり、《相続分》の放棄ではありません。
そのため、あなたが遺言書を書かない、あるいはあなたの遺言書が無効になると、ご主人は法定相続することになります。
そのため、間違いのない遺言書をつくる必要があります。
若干の費用がかかっても、公証役場で公正証書遺言をお作りになることをおすすめします。
【ご主人に遺産を与えないためのその他の方策について】
当ブログQ&A №379が今回の質問とよく似ています。
その中で、《ご主人に遺産を与えないためのその他の方策について》説明しています。
ご参照ください。
参照条文②:民法第1043条(遺留分の放棄)
1.相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずる。