5年前、父が死んだとき、姉2人が「財産はなにもいらない」といって、法定相続分は放棄する、といいました。
そこで、安心して、土地の登記をそのまま(父の名義)にしといといたんですが、 今度、父がしんでから、5年たったので、そろそろ、私名義に相続登記しようと思ったら、今度は姉が、「やっぱり法定相続分の3分の1もらう」といいだして、相続登記に協力しません。
以前、姉2人が「財産はなにもいらない」といって、法定相続分は放棄する、といったのではないか、というと、「あれは、撤回する」とかいいだしました。
一度、口頭とはいえ、法定相続分放棄したのに、後になって撤回できるのでしょうか?
どう対応したらいいのでしょうか?
姉2人が「財産はなにもいらない」といって、法定相続分は放棄する、といいました」ということが、遺産分割協議だとおもうのですが。
つまり、この言葉は、遺産分割協議の時に、法定相続分の放棄に合意した、ということではないのでしょうか?
遺産分割自体は、口頭でも成立するのではないのでしょうか?
遺産分割協議書は作成しなければならないというものではないと思いますが。
そうすると、一度成立した遺産分割協議は原則として撤回できないのではないのですか?
たとえ、遺産分割協議書がなくても。
【口頭でも遺産分割協議は成立します】
法律上、口頭でも合意ができれば遺産分割協議は成立します。
ただ、問題はその証明ができるかということです。
たとえば、裁判になったとき、お姉さんが「相続財産を一切受け取らず、あなたにすべて相続させる約束をしました」という証言をしてくれるでしょうか。
もし、してくれれば、あなたの主張は認められる可能性がないわけではありません。
しかし、最近のお姉さんの発言からしますと、そのような証言をするとは考えにくいでしょう。
仮にお姉さんがそのような証言をしたとしても、《本気で言ったのではなかった》という手もありそうですし、お姉さんに弁護士がつけば、それは《確定的な意思表示ではなかった、もし、遺産分割協議書という形できっちりと財産を分けるのなら、法定相続分を主張するつもりであった》というような主張をする可能性も高いです。
【あなたの立場で今、何をするべきか?】
あなたとしては、まず、お姉さんがそのような発言をしたということを証明する必要があります。
そのため、お姉さんに事実を確認し、その際、録音をして証拠を残す必要があるでしょう。
次に、お姉さんがなぜそのような発言をしたのか、そのような発言をした理由や動機も押さえておく必要があるでしょう。
例えば、お姉さんが生前に多額の贈与を得たからでしょうか、それともあなたがお父さんの面倒を献身的に見たからでしょうか。
もし、そのような事情があれば、お姉さんの発言も真意に基づく確定的なものであるとされる可能性がなくもありません。
ただ、そのような事情がなく、「財産はなにもいらない」と言ったということだけでは裁判所は相続分の放棄をする確定的な意思表示があったとは認定しない可能性が高いでしょう。
あなたは納得いかないかもしれませんが、裁判は言った言わないということだけで判断するのではなく、そのような発言をするような事情(諸般の事情といいます)があったかどうかをも重視し、結論を出すものだと考えられるといいでしょう。
【現実的な対応も考える】
あなたへの相続登記を行うためには、お姉さんが実印を押印し、印鑑証明書を添付する等の協力が必要不可欠です。
「あのとき相続分は要らないと言ったではないか」とお姉さんを責め続けたとしても、お姉さんが登記に協力しなければ相続登記はできず、結局は訴訟をせざるをえず、しかもその訴訟であなたが勝訴するかどうかははっきりとはしません。
現実的な対応としては、お姉さんに「放棄すると言ったではないか」ということで責め続けつつも、一定の対価を支払って相続登記に協力してもらうというのが最も解決しやすい方法だろうと思います。