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実例Q&A

娘に無断で義母が行った貸金契約の効力【Q&A №681】

2020年7月20日

【質問の要旨】

他界した義母が生前、本人の承諾なく名義を利用し借金を作っていたことが判明。

この借金は相続放棄できるか?

 

 

 

 

 

【回答の要旨】

本件では、貸金債権者からは息子と娘に請求ができる可能性が高く、母は貸金債権者から債務を請求される可能性は少ない。

そのため、相続の放棄は絶対に必要とはいえない。

ただ、他に資産がないなら、念のために相続放棄をしておくとよい。

 

【ご質問内容】

こんばんわ。

突然の質問、失礼いたします。

義母の借金の話なのですが。

先日、義母が他界し、保険金の受取の話をしていたのですが、まず義弟の名義にて借金をしていたため、その分の返済に当てるため、保険金の割合を義弟が少し多めに貰うことになっていました。

義母は私の嫁(義母の娘)の通帳も保管していたのですが、そちらの通帳からも借金を作り、私の嫁の名義で50万円ほど借金をしていたようで、嫁の方はそのことを把握していなく、義母が亡くなってから、通帳を回収したあとに発覚しました。

この借金は手続き等により相続放棄などはできるものなのでしょうか?

うまく説明できなくて申し訳ありません。

 (タカヒサ)


 ※敬称略とさせていただきます。

 

【だれが借金を支払うのか?・・息子名義の借金の場合】

まず、誰が借金を支払う必要があるのかを考えます。

まず《息子名義での借金》です。

質問からは、なぜ、母が息子名義で借金ができたのかが明らかではありません。

お金を貸した債権者としては、当然、名義人の息子に請求をします。

息子としては請求を拒むためには、《自分は全く借金に関与していない》ということを証明する必要があります。

母と息子は性別も年齢も異なるので、息子名義で借り入れができたということは、息子が関与している、あるいは息子になんらかの過失があったことを推測させます。

息子の借金になるかどうかは、最終的に裁判で決まることですが、仮に息子に借金返済義務があるということなら、母には息子名義の借金の支払義務はありません。

【だれが借金を支払うのか?・・娘名義の借金の場合】

次に母がした《娘名義の借金》についても、母が他人である娘の名義で借金できるにはそれなりの事情が必要です。

質問では、娘が通帳を預けていたということですが、母が借入をするには通帳だけでは足りず、娘が自分の印鑑を一緒に預けたり、あるいはキャッシュカードを使わせたり、暗証番号を教えたりというような事情が必要です。

娘が上記のようなことをしていた場合には、娘としては不本意からもしれませんが、貸金債権者からの請求に対して支払いを拒むことはなかなかむずかしいです。

そうすると、ここでも、貸金債権者に債務を負うのは娘であり、母は債務を負いません。

このように、母が貸金債権者に対して貸金債務を負わないのなら、母の遺産に対する相続放棄は必要ありません。

ただ、もし、母に他に資産がないのなら、次項に述べるような場合も考えられますので、念のために、相続放棄をしておくのが無難でしょう。

【貸金債権者の関係で相続放棄が必要な場合はこんな場合】

これまでに述べたように、

ただ、もし、息子なり娘なりが裁判などにより、自分たちが借り入れに関与していないことを証明し、貸金債務を負わないということがはっきりすると、母は他人名義を使って借入したことで、貸金債権者に対し、不法行為による損害賠償債務を負うことになります。

そのようなときには、母の上記債務を引き継がないために相続放棄をする必要があります。

なお、裁判が確定するまでには少なくとも1年程度の時間がかかります。

相続放棄は相続開始を知って原則3ケ月以内にする必要があります。

裁判はそのような短期間では終わらないので、裁判所に相続放棄の期間を延ばしてもらう手続きをする必要があります。

(弁護士 岡井 理紗)

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