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実例Q&A

昔の生前贈与は遺留分に影響するか【Q&A №53】 0053

2010年12月22日


 

亡き祖母の相続財産の件です。

祖母と同居していた2男は生前、多額な特別受益を受けていました。

民法1030条ですと、1年以上前のものは悪意であることを立証しなければならないと書かれていますが、1044条では、ずーっと遡って相続財産になると書かれていますが、どっちの方で考えればいいのでしょうか?

(コーちゃん)

 

 

今回の質問は民法の条文をよく読まれている方からの質問です。

少し専門的になりますが、お答えします。

【民法1030条では遺留分に算定される贈与は1年前まで】

民法第8章は遺留分に関する条文を記載しています。

その中の《民法1030条》は
「贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価格を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。」と定めています。

この条文は、遺留分を算定の前提となる遺産の範囲を定めたものであり、生前贈与については、原則として相続開始時点より1年前の分だけを加えることになっています。

【民法1044条、第903条1項では、1年以上の分の贈与も含む】

ところが、同じ遺留分に関する第8章の末尾に置かれている民法1044条は、同法第903条1項を準用すると定めています。

この準用される第903条1項は「共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価格にその贈与の価格を加えたものを相続財産とみなし、前三条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価格を控除した残額をもってその者の相続分とする。」というものです。

【こう考えれば矛盾しない】

今回の質問は、遺留分の算定の基礎となる遺産に加えられる贈与は、相続開始から1年前の分までなのか、そうでないのかについて、民法の条文(1044条と1030条)が矛盾しているではないかという非常に鋭い指摘です。

次のように理解すればいいでしょう。

第903条は相続人の特別受益となる贈与について定めたものですが、この規定が民法第1044条により遺留分に準用されるため、第1030条は相続人以外の贈与について適用されることになります。

結局、贈与を受けた者が相続人であり、その贈与が「特別受益」になるかどうかで結論が異なってきます。

相続人の受けた贈与が「特別受益」になるものであれば、1年以上前の贈与も含まれる。

しかし、相続人ではない人に対する贈与は、原則として相続開始前1年分しか含められないということになります。

今回の質問では、「祖母と同居していた二男」の贈与が問題となっていますが、この二男が祖母の二男であるなら、相続人になります。

この贈与が「特別受益」となるのであれば、1年以上前の贈与であっても遺留分算定の基礎となる遺産に参入されます。

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