私は被相続人の養子です。
被相続人には子供はいません相続人は私と被相続人の妻だけです。
(被相続人は平成26年9月に死亡)
被相続人の妻が被相続人死亡後株は私の名義に変更したと言ってるのですが私の同意なしに株券の名義変更ができるのでしょうか。
預貯金や有価証券は生前から妻が管理していました。
名義変更したものは元に戻せないのでしょうか。
戻せるとしたらどのようにすればよいのでしょうか?
お尋ねいたします。
よろしくお願いします。
【公正証書遺言で遺言執行者が指定なら、同意なしで移転する・・上場株式の場合】
「株式の名義が《私》に移転した」と質問に記載されています。
この場合の《私》は妻のことを言っているのか、それとも《質問者のあなた》のことを言っているのかわかりにくので、場合を分けて回答します。
なお、最初に上場株式について述べ、非上場株式については後に項を変えて述べます。
1)まず、妻の名義になっている場合 あなたの知らないうちに遺産である株式が、《妻》の名義に移るということですが、結論から言えば、
①公正証書で遺言されていること
②遺言執行者が指定されていること。
という前提であれば、あなたの知らないところで妻の名義に株式譲渡がなされている可能性があります。
参考までに言えば、自筆証書遺言であれば、家庭裁判所での検認手続(相続Q&A №121を参照)が必要であり、その際、全法定相続人等に裁判所に出頭するようにとの通知がきます。
今回、そのような通知が来ていないということであれば、検認手続きが不要な公正証書遺言に基づく手続きがなされたのだと思います。
なお、遺言執行者は遺産目録を作成し、法定相続人等に交付する義務(民法1011条。末記に記載している条文を参照ください)がありますが、弁護士などの法律専門家が遺言執行者の場合は別として、目録を実行している人はあまり多くありません。
2)次に《質問者であるあなた》の名義にしたというのは可能性が低いでしょう。
株式の名義を移転するにはあなたが証券会社に口座を持っている必要があります。
あなたが持っている口座を妻が知っているのも考えにくく、また、口座がない場合にあなたの同意なしにあなたの口座が作ることは不可能です。
いずれにせよ、あなたの関与なしに、あなたに株式が譲渡されている可能性はないでしょう。
【株式を取り戻すためには・・・上場株式の場合】
実際に妻に株式の名義が変更がなされてしまった場合には法的手続きが必要になります。
ただ、その前に、被相続人がどこの証券会社のどこの支店に株式を持っていたのかを知っておく必要があります。
もし、被相続人の自宅にその証券会社からの手紙等が来ているのであれば、法定相続人としてその会社に照会をかけ、譲渡に関する事実を調査する必要があります。
次に、株式の譲渡が判明した場合には、その株式の譲渡を無効や取り戻すことを考える必要があります。
通常は、無効や取戻しになる理由としては次のものが考えられます。
①遺言書で遺産の大半が妻のものになっているのなら、遺留分減殺請求(「相続コラム:遺留分とは」参照)をし、本来の法定相続分の半額(遺留分)の限度で株式を取り戻す。
②被相続人が遺言書を作成した当時、判断能力(意志能力)がなかった。
また、今後、妻が株式を譲渡したり、他の財産を処分したりすることもあり得ますので、必要に応じて株式譲渡をしないようにする仮処分申し立ても必要になる場合もあります。
ただ、遺留分にせよ、意志能力にせよ、また、仮処分にしても、素人では対応が難しいので、相続に詳しい弁護士に早期に相談されるといいでしょう。
【上場株式ではない場合】
前項では、上場株式を前提に記載しました。
上場株式でない場合には、妻とあなたとの間で、遺言書や遺留分を反映させた遺産分割協議書を作成し、株式の帰属をはっきりさせるといいでしょう。
もし、妻が遺産分割協議書の作成に応じず、《あなたの株式》にしたことが間違いないというのであれば、その旨の確認書を作成してもらうといいでしょうし、今後、その会社の株主としての権利を行使して、株主としての実績を作り、株主総会で役員に選任されて活動されるといいでしょう。
また、《妻》の名義にしたというのであれば、遺留分減殺の手配や意思能力を見極めるため、必要に応じて弁護士と相談されるといいでしょう。
《参考条文》
民法 第1011条 (相続財産の目録の作成)
第1項 遺言執行者は、遅滞なく、相続財産の目録を作成して、相続人に交付しなければならない。