相続財産に土地や建物、株があります。
このうちの株はタンス株でしたが相続人の一人【以後Aとします】が勝手に持ち出し、ほかの相続人の同意なしにAの名義としてしまいました。
本来同意なしにできないはずですが、預けてある証券会社によると株の電子化の前はできていて、現在Aの同意なしに内容の開示はできないとのことでした。
このままではAに使われてしまうか他人に譲渡する可能性があります。
まず弁護士会照会で相続財産を把握しようと思ったのですが、名義を元の被相続人に戻すか、差し押さえるかどちらかができないと照会する意味もないかと思い、その可否をおたづねしております。
おそらく死んだ人の名義にはできないと思われるので、差し押さえになるかとおもいますが、被相続人のものであり他の相続人が同意していないことを証明できれば差し押さえは可能ですか?
またこの場合弁護士を通さず自分ですることはできますか?
弁護士会照会や調停になると費用が高いため、相続財産の照会をするかなど迷っています。
【名義の返還より損害賠償を考える】
遺産である株式については、法定相続分に応じて、各相続人が共有(正確には準共有)しています。
その株式をAさんが無断で単独名義にしたということですので、他の相続人としては、自分の相続分に対応する株式を、自分に返還せよと請求することができます。
ただ、株券の電子化により手続きが複雑になります。
そのため、株券の返還を求めるより、株券の名義の無断変更で損害を受けたとして、損害賠償請求をするのがいいでしょう。
【仮処分や仮差押も考える】
「このままではAに使われてしまうか他人に譲渡する可能性があります」ということですが、そのような移転の可能性があるなら、仮処分又は仮差押えという手続きをするといいでしょう。
株券の返還を求める権利があるという前提で株券の移転を禁止する仮処分も考えてもいいでしょうし、損害賠償請求権があるという前提でAさんの財産を仮差押えしてもいいでしょう。
仮処分や仮差押えは、保証金を積んで、裁判所に株券や財産の移動を暫定的に禁止してもらう手続きですが、このような手続を希望されるのであれば、専門家である弁護士に依頼するといいでしょう。
なお、仮処分・仮差押えをしながら、訴訟をすることも可能ですが、詳しくは依頼した弁護士にご相談ください。
【株式の履歴は、被相続人の方からの調査を考える】
前記損害賠償請求や仮処分、仮差押えの手続きをする場合には、株式がAさんに無断移転されたという点だけではなく、いつ、どこのどのような株式が誰に移転されたのかを明らかにする必要があります。
質問によると、名義移転された株式に対する照会について、「現在の名義人の同意なしに内容の開示はできない」という回答があったようです。
相続人Aはあなたにとっては他人になりますので、Aさんの履歴であれば、その同意なしには開示されないのはやむをえないところでしょう。
しかし、被相続人名義の株式の照会なら開示される可能性があると思われます。
次の事項を照会されるといいでしょう。
① 被相続人保有の株式が現在あるか、あるいは過去10年間の間に存在したかどうか。
② あるとしたらその種類、数量等の明細
③ 現在ないが、過去にあったとしたら、いつ、どの種類の株式及びその数量が誰に移転したのか・
なお、被相続人の照会では、現在、株式がどうなっているのか(たとえば現時点でAが保有しているのか)は明らかにはなりませんが、それでも最小限度の事実は確認できるでしょう。