【共有建物の住居部分の家賃光熱費について】
賃貸店舗のある物件で、二分の一持ち分三〇年前、建築したときから、保存登記もされています。
父親と共有で、共同経営していました。
私の住まいとして、父親がその物件で住めばいい、家賃光熱費いらないからと三〇年家族ですんでいます。
父親が亡くなり、父親の持ち分が相続で姉になり、過去一五年分家賃光熱費請求してきました。
土地全部父親の名義でしたが相続で姉の名義です。ちなみに地代も請求してきました。
私は、建物全体経費電気水道局他支払いしている。相続後姉は、父親の名義のテナントから、家賃光熱費受け取っている。
わたしの持ち分所有権保存登記されています。相続の時生前贈与扱いです。
姉の請求納得いかない。
経費二分の一も支払いしてくれない。
よろしくお願いします。
【考えるポイント】
相続人は、被相続人(本件ではお父さん)の持っている権利や義務を受け継ぎます。
そのため、地代、家賃や光熱費の支払いの要否については、お父さんとあなたとの権利や義務がどうなっていたかを確認する必要があります。
以下においてはそのような観点から検討していきます。
【地代について】
まず、お姉さんから請求のあった地代について検討します。
土地はお父さんの単独所有、建物はお父さんとあなたとで各2分の1の共有ですので、あなたはお父さんの土地の2分の1を使用していることになります。
土地利用につき、あなたがお父さんに賃料を支払っていたというのであれば、あなたとお父さんのとの間に賃貸借契約が成立しており、お父さんから土地を相続(ということは賃貸人の地位も相続)したお姉さんに対し、賃料を支払う義務があります。
ただ、あなたが賃料を支払わず、お父さんも請求しないことについて(暗黙でも)合意があったということであれば、お父さんとあなたとの間には、土地を無償で使用させる使用貸借契約が成立しており、相続でお父さんの土地を取得したお姉さんは、お父さんと同様にあなたに土地を無償で使用させる義務があり、賃料請求はできません。
ただ、あなたは使用借権という無償で土地を使う権利をお父さんからもらったのですから、その使用借権が特別受益とされる可能性があります。
しかし、質問では少なくとも不動産については遺産分割協議が終了しているようですし、他の遺産についても遺産分割協議が終了しているようであれば、特別受益の問題は既に解決済みとして扱うといいでしょう。
【家賃について】
建物は、賃貸店舗に出されていた分と、あなたの居住用にされていた分があるようですので、分けて記載します。
賃貸店舗に出されていた分については、誰が賃料を取得していたのかによって異なりますが、あなたが賃貸人として賃料全部を取得していた場合、その賃料の中には本来はお父さんが取るべき分もあったはずです。
お父さんが、あなたから自分の建物持ち分に相当する賃料相当額を請求しなかったのであれば、その分も使用貸借同様の関係になり、その使用貸借権がお父さんからあなたへの生前贈与として特別受益になります。
次に、あなたが建物の一部を住居として使用していたことについてですが、お父さんとしては家賃はいらないということですので、その無償使用分も使用借権になり、その権利の価額が特別受益になります(なお、遺産分割協議が終了していれば特別受益問題は解決済みであることは上記「地代について」の末尾に記載したとおりです)。
いずれにせよ、あなたが建物を無償で使用するということをお父さんが認めていたのであれば、建物の持ち分をお父さんから引き継いだお姉さんとしても、お父さんと同じようにあなたに無償で貸与すべき義務があり、家賃を請求することはできないという結論になります。
【光熱費、経費について】
お父さんの死亡までは、建物全体経費電気水道局他の支払いをあなたが負担し、光熱費はお父さんが負担いたということですので、そのような内容の分担の合意が成立していたと考えてよく、お父さんの時代の精算は不要と考えていいでしょう。
ただ、相続開始後は、お姉さんが底地全部や建物の持ち分を相続したということですので、費用関係については、お姉さんとの間で協議をされ、新たな合意をされるといいでしょう。
【弁護士と相談されることも考える】
以上、原則的な考え方を記載しました。
ただ、お姉さんの態度から見ると、調停や訴訟に発展する可能性もありそうです。
また、事案の内容によっては、より詳しく聞くと回答が変わってくる場合もあります。
相続に詳しい弁護士と法律相談をされることも考えられるといいでしょう。