①昭和51年3月に店舗付き住宅(土地78.09㎡)を父が3/5、私が2/5を共有所有し購入しました。
また、隣の中古店舗付き住宅(土地78.38㎡)が売りに出て、②昭和62年7月に父が1/2、私が1/2を共有所有し購入しました。
その後、平成2年12月に①の所有権3/5を移転してもらいましたが、②については、父の1/2の所有はそのままです。
兄弟の言い分として、
当然②の1/2は父の相続財産であり、①の3/5は特別授与に当たる。
また、父の所有していた部分について無償で使っていたのだから、土地と建物の使用料が特別受益に当たると言われ困っています。
①の無償使用期間が昭和51年3月から平成2年12月の179ヶ月間(108ヵ月分)
②の無償試用期間が昭和62年7月から平成24年1月の294ヶ月間(147ヵ月分)
①と②の賃貸分として特別受益に当たると言われています。
仮に特別授与になるのでしたら、毎月の使用料はいくらぐらいが妥当でしょうか?
【贈与であれば特別受益】
まず、①の店舗付き住宅の5分の3の所有権移転が贈与であれば、特別受益に該当すると考えられます。
民法の条文では、「生計の資本としての贈与」を特別受益としていますが、実務では相続人に対して多額の財産を移転すると、特別受益とされると考えていいでしょう。
【無償使用の権利は特別受益になります】
あなたが②の店舗付き住宅のお父さんの持分2分の1を無償で使っているのは、共有者間の合意に基づくものであり、使用借権のようなものです。
この無償で使用する権利は、死亡後も続くものと考えられますので、使用借権と同様に特別受益に該当すると思われます。
したがって、その無償使用を設定してもらったことで発生した権利は特別受益として扱われ、相続発生時点でその権利の価額が遺産に算入されます。
【死亡までの無償使用分は特別受益に該当しない】
前項で記載したように、お父さんの土地建物の持分の無償使用権は特別受益に該当し、遺産に算入されます。
しかし、特別受益は、受益の原因となる行為の効力を奪うものではありません。
相続人間の公平を考慮して、特別受益として権利の価額を遺産に組み入れようとするものです。
合意後の無償使用分は、前項で記載した権利の内容を実現するものです。
その権利自体が特別受益として遺産に算入されている以上、この権利内容を実現する現実の無償使用は特別受益にはなりません。
なお、この点については、判例を「Q&A №109」に記載しているので、その部分を再掲します。
「使用期間中の使用による利益は、使用貸借権の価格の中に織り込まれていると見るのが相当で」あり、使用料を加算することには疑問がある。