身寄りのない父の兄弟が今年亡くなり、これから相続の手続きを行います。
生前、父は身の回りの世話をしており、7年、5年、3年程前にそれぞれ300万円づつ贈与を受けております。
(但し、贈与の申告はしていません。)
遺言もありませんのでこの場合、
現財産+生前贈与(900万円)=相続財産 となり、他の相続者に900万円の申告をしなければならないのでしょうか?
それとも、年数によっては申告の義務は無いのでしょうか?
ご多忙の折、恐れ入りますがご回答の程、宜しくお願い致します。
【贈与された財産は相続財産には含まれません】
相続財産とは、被相続人が死亡した時点で被相続人が有していた総財産のことです。被相続人が生前贈与した財産は相続財産には含まれません。
従って、今回の質問において、あなたの父が贈与を受けた900万円は、原則として、相続財産に含まれません。
【特別受益に該当するかどうか?】
ただし、生前の贈与が、「婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた」ものに該当すれば、特別受益として相続分を定める際に考慮されます。
例えば、父親が娘の嫁入りのときに多額の持参金を持たせた場合や、息子が家を出て独立する際に父親が多額の贈与をした場合には特別受益とされる場合があります。
本件では、3回にわたり合計金900万円もの多額な贈与がされているため、特別受益に該当すると考えられますが、身の回りの世話に対するお礼として支払ったというのであれば特別受益にあたらない可能性もあるかもしれません。
【特別受益に該当した場合は相続財産に組み入れられます】
生前贈与が特別受益に該当する場合には、その生前贈与分を死亡時の財産に加えて、その合算額を前提に相続分を計算していきます。
なお、特別受益を受けた時期に限定はなく、3~7年前の贈与でも特別受益に該当します。
【他の相続人に知らせる法的義務はない】
父に生前贈与がされていた点を、他の相続人に知らせる法的な義務はありません。
ただ、生前贈与の結果、被相続人の死亡時点での財産がかなり少なくなってしまっているような場合であれば、財産がどこに行ったのかが兄弟間で問題になる場合があるかもしれません。
兄弟間のつながりを大事にしたいと思うのであれば、法律的には知らせる必要はなくとも、贈与を受けたということを知らせて、他の兄弟に了解してもらうという選択肢もあると思います。