母のかかっていた訪問診療クリニック、訪問看護、訪問薬局は、まず医療機関と家族が契約したうえでサービスが提供されるシステムでした。それで、娘である私が契約書に記入し、医療費は一か月分まとめて、私の口座から、翌月に自動引き落としになっていました。
私の場合、医療費は私の口座から払うという契約になっており私が支払ってきたことは通帳記録からも証明できるのですが、そのような場合でも払い戻し金は受け取れないのでしょうか。
三ケ所それぞれに限度額認定証を提示していますが、それでも合わせると月に20万程度支払っています。合算された払戻金が受取れないのはキツイです。
【還付金返還請求権は誰のものなのかが問題です】
年金については、特別に法律で、死亡した時点までの未支給分については、順位は、「配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹」というように、民法の法定相続人の規定とは別個のもらえる順序が定められています。
高額療養費は、健康保険法に基づく高額療養費制度に基づくものですが、この請求については、死亡までの未還付分がどのようになるかを直接定めた規定はありません。
ただ、健康保険法では、この高額療養費を請求できるのは《世帯主又は組合員健康保険の被保険者》と記載されています。
お母さんが世帯主か、組合員健康保険の被保険者である場合には、お母さんが請求権者であり、その権利はお母さんの遺産になります。
このようにその療養費請求権がお母さんのものである場合には、高額療養費請求権はお母さんの遺産になり、《相続放棄をすれば高額療養費は受け取れない》という結論になります。
【あなたが世帯主または組合員かどうかを確かめる】
あなたの場合、まず、あなたが世帯主か、健康保険の組合員かどうかを確認しましょう。
もし、どちらかであれば、先ほどの健康保険法の規定上からみて《世帯主又は組合員健康保険の被保険者》であるあなたの独自の権利として請求できると理解してもよいでしょう。
この場合、役所に出向き、あなたが《世帯主又は組合員健康保険の被保険者》であったことを説明するとともに、現実にもあなたがお金を支払ってきたという証拠として通帳等を持参されるといいでしょう。
【最後は、ダメ元の精神で役所と協議する】
なお、あなたが《世帯主》でもなく、又《組合員健康保険の被保険者》でもない場合でもない場合には、あなたには請求権がないように思われます。
しかし、
① お母さんのかかっていた訪問診療クリニック等との契約はあなたがしていた。
② 医療費は、あなたの口座から自動引き落としになっていた。
という事実がありますので、あなたが返還してもらってもおかしくはないともいえます。
役所と交渉して、支払ってもらったという話も聞いたことがありますので、あなたとしても、実質上の支払い者であるということを訴えて、療養費の振込み口座をあなたの口座にしてもらえるよう、努力されるといいでしょう。
参考条文:健康保険法第57条の2(高額療養費)
保険者は、療養の給付について支払われた一部負担金の額又は療養(食事療養及び生活療養を除く。次項において同じ。)に要した費用の額からその療養に要した費用につき保険外併用療養費、療養費、訪問看護療養費若しくは特別療養費として支給される額若しくは第56条第2項の規定により支給される差額に相当する額を控除した額(次条第1項において「一部負担金等の額」という。)が著しく高額であるときは、世帯主又は組合員に対し、高額療養費を支給する。ただし、当該療養について療養の給付、保険外併用療養費の支給、療養費の支給、訪問看護療養費の支給若しくは特別療養費の支給又は第56条第2項の規定による差額の支給を受けなかったときは、この限りでない。
2 高額療養費の支給要件、支給額その他高額療養費の支給に関して必要な事項は、療養に必要な費用の負担の家計に与える影響及び療養に要した費用の額を考慮して、政令で定める。