【質問の要旨】
奨学金(学費)は4割増しで遺産から引かれるのか?
【ご質問内容】
相続人は私と妹と妹の3男(養子縁組)の3人です。
父の日記より、私の結婚時、両親が買ってくれた着物の代金と私が既にローンで買っていた毛皮等の残金を払ってくれていました。(40年前)
その他に持参金を数十万頂いております。
妹の奨学金ですが、親の遺産から4割増しで引くとあります。
法律は全くの門外漢で分からないのですが、奨学金が4割増しで親の遺産から引かれるものでしょうか?
母は、20年ほど前に亡くなり、一人息子である父だけでした。何とかH11年からの5年もの日記を3冊持ち帰りましたが、葬儀の翌日妹家族が全て処分してしまいました。
几帳面な父の遺品と遺言書はありません。
H11年以前の5冊25年分は妹が持っています。
【前提となる事実関係】
今回は「妹さんの奨学金」の借入経過について少し抽象的な部分があるため、次のようなご相談と理解し、回答させていただきます。
① 妹さんは奨学金(学費)をかつて自力で借入、返済をした。
② 他方で、お姉さん(相談者)は結婚の際に着物や持参金をお父さんからもらっている。
③ お父さんの日記には、「妹の奨学金は4割増しで遺産から引く」という記述がある。
(=お父さんとしては、妹は自費で奨学金を借入、返済させたので、遺産分けの時は妹に奨学金の分だけ多めに4割増しで渡して欲しい、という心情で日記を書いた。)
④ ③のような扱いは法律上正しいのか。奨学金が4割増しになるような理由があるのかを相談したい。
【日記は遺言としての法的効力を持ちません】
まず前提として、日記は遺言としての効力を持ちません。
そのため、日記のとおり遺産分けをする必要はありません。
日記にあるお父さんのお気持ちを尊重して遺産分けをすること自体は珍しくありませんが、法的に従う義務がないことはご理解下さい。
以上の前提でいえば、妹さんの奨学金を考慮して、遺産を妹さんに多めに渡さなければならない理由はありませんし、4割増しにする理由もありません。
【結婚費用・持参金は特別受益にならない可能性も高い】
まず、お姉さんのいわゆる嫁入り道具や持参金は特別受益にあたる可能性があり、嫁入り道具として購入してもらった着物の代金や持参金数十万円などは、特別受益とされることと考えられます。
(この点は当ブログQ&A №507に同様の質問がありますのでご参照下さい)
ただ、家庭裁判所の調停では、妹さんや弟さん(養子)の結婚に際してもそれなりの資金提供をされているケースが多く、嫁入り道具や持参金額が格別に高い価額ではないような場合以外は、特別受益はお互い様として帳消しにしてはどうかという対応を調停委員が言われることが多いです。