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実例Q&A

認知症の母の口座から引き出された金員の分配方法【Q&A №702】

2020年10月15日

【質問の要旨】

・母は認知症が進行し10か月前に介護施設へ入所。母の子供は3名(A・B・C)

・母が入所する2日前、Bは母に同行し母の預金から300万円引出した

・最近になりBは、300万円引出しは母の意思で、また母の意思で以下のように分けると主張

 A:0円 B:100万円 C:50万円 残金はBへ(Bが母に貸したり使ったりした分)

・Bは、他の銀行にも母よりBが生前贈与された100万円があり、そこから母の年金支払不足分を支払うと主張

・母の預金を兄弟で均等に分配できるか?Bを罪に問えるか?

 

 

 

 

【回答の要旨】

・300万円をどうするかを決める権限をもつのは母のみ

・母に意思能力がなければ、母に返すべき

・Bが使い込んだ場合は、母を相続した後に請求する

・Bを罪に問うことはできない

・母に意思能力がないのであれば、成年後見申立も検討すべき

 

【ご質問内容】

ABC3兄弟の母の認知症が進行し持ち家で一人で生活出来なくなり10か月前、全員合意の上Cの側の介護施設に入所。

入所の2日前にBが母の預金317万の中から300万同行しておろしていた。

おろしたことは後日A.Cにも伝えたが金額は言わず。

3か月後BはCだけに50万渡すと告知。Cは3人で分けたいと断る。

最近になり300万不明が発覚し、家族ラインで聞くと母の意思でおろし母の意思でA\0、B100万C50万にわける、残りはBが貸したり使ったりしたもの(明細なし)だからと主張。

他の銀行にもBが生前贈与された好きに使える100万があるから施設で母の年金支払不足分は明細があれば払うとのこと。

母はAを嫌いな母の姉と思いこんでいます。

AはBに何もしてないやつは口出すなと言われましたが均等に分配できますか?

Bを罪に問えますか?

 (義母介護中A)


 ※敬称略とさせていただきます。

 

【300万円をどうするかを決める権限をもつのは母のみ】

 Bが母に同行し引き出した300万円について、どのように使うか決める権限を持つのは、母のみです。

 そのため、母の意思によらずに、兄弟で均等に分配することができるわけではありません。

 母は認知症とのことですが、認知症といっても程度はそれぞれですので、母が自分の財産をどのように利用するか判断するだけの能力(意思能力)があるのなら、母の考えを聞いて、そのとおりに分配するといいでしょう。

 

【母に意思能力がなければ、母に返すべき】

もし、母がすでに、意思能力がないなら、現段階では母の意思を確認することはできません。

Bは、母の意思でBが100万円、Cに50万円を贈与し、残り150万円はこれまでBから借りたり使ってもらったりした分としてBに返すと言っていると主張しているようですが、現在の母に意思能力がないなら、これが正しいかどうかを確かめることもできないでしょう。

 母が上記の意思を書面化しているなどの事情があるならともかく、客観的な資料がないのであれば、あなたとしては、母の意思がBの言う通りかどうかはわからないと主張し、300万円を母に返還させるべきでしょう。

 

【Bが使い込んだ場合は、母を相続した後に請求する】

 上記の通りBに対して返還を求めてもBがそれに応じず、上記の通りの割合で分配してしまった場合でも、あなたはすぐにBに対して返還請求ができるわけではありません。

 300万円は母の財産ですので、Bに対して返還を求めることができるのは、母のみだからです。

 母に意思能力がない場合には、後に述べる成年後見人を選任して、後見人から返還請求をするしかないでしょう(但し、後見人によっては選任より以前の問題にはタッチしないという人もいますが)。

 ただ、将来母が亡くなって、あなた方が母の財産を相続すれば、母がBに対して返還を求める権利の一部もあなたが相続することになりますので、その段階でBに対して返還を求めることが可能になります。

 そのときBが「もらっていない」などと言わないように、たとえば、Bから「上記割合で分ける」という内容のメールをもらっておく、会話の内容を録音しておくというような証拠集めもしておかれると良いでしょう。

 

【Bを罪に問うことはできない】

 最後に、Bを罪に問えるかというご質問についてですが、仮にBが母の意思によらずに勝手に引出しを行ったとすれば、それは横領罪になります。

 ただ、刑法には直系血族間で窃盗や横領をしても刑が免除されるという、「親族相盗例」とよばれる規定があります。

母とBとの関係は母と子であり、直系血族ですので、処罰されることはなく、警察が捜査に動くことはありません。

そのため、Bを罪に問うことはできません。

 

【母に意思能力がないのであれば、成年後見申立も検討すべき】

最後に、母に意思能力がないのであれば、今後他の兄弟により母の口座から出金されることも考えられます。

これを防止するためには、成年後見の申立てをすることが考えられます。

成年後見人が選任されれば、母の財産は成年後見人が管理することになり、他の兄弟が勝手に出金することはできなくなるからです。

もしも今後も他の兄弟が母の財産を出金する可能性があるのであれば、成年後見の申立てをぜひ検討されるとよいでしょう。

(弁護士 岡井理紗)

 

 

 

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