誤認により特別受益とされた分が、遺留分を超えた場合どうなる
Q&ANo.137での「大学費用は特別受益になるのか?」の回答で、「父親の財産から学資が出ている場合、母親からの相続では特別受益にはならず、遺留分減殺請求をすべし」とあります。
同じケースで、具体的な金額が記述されている場合のご相談です。遺言書には「長男には学資として400万円を贈与したので、相続額は100万円のみとする」とあり、相続時の遺産総額が1200万円でその遺留分が300万円の場合どうなるかです。
この場合、300万円でなく500万円(400万円+100万円)を遺産分割してもらえますか?母親の誤認がなければ、長男には500万円を相続させた筈と考えるのですが、どうでしょうか。
母親の誤認として遺言書が無効である旨の裁判を起こす必要がありますか?
【重大な事実誤認も無効原因となる余地はありますが・・】
一般には、遺言にも錯誤(重大な事実誤認など)に関する規定が適用されると理解されており、錯誤も場合によっては遺言の無効原因となることがあります。
【「誤解」に基づく遺言とは言い切れない】
しかし、今回のご相談では、お父さんの財産から大学の学費として400万円を出ているのが事実であれば、お母さんが《誤解》して遺言を作成したとは必ずしも言い切れません。
お母さんには、あなたはお父さんが学資を出して大学に行かせたが、妹さんには大学に行かせてやれなかったことへの後悔があったかもしれません。
そのため、お母さんが遺言書を作る際「私(お母さん)の遺産の相続では妹を優先してあげよう」と考えていたという解釈も可能です。
そのような理解だと、《誤解》はどこにもないように思われます。
【「誤認」があっても、法的な仕組みに関するものにすぎない】
お父さんが出した学費はお父さんの相続の問題であり、お母さんの相続では何らの関係もないのに、その点をお母さんが《誤認》したという可能性もあります。
このような《誤認》は事実についての誤解ではなく、法的な解釈についてのものです。
そうだとすれば、ご相談のような遺言の記載があったとしても、事実に関する誤解はなかった、ということになります。
その点だけを理由に遺言の無効を主張し、遺留分以上の遺産分割を受けることは難しいでしょう。
【結局、遺留分としては・・】
お母さんの遺産総額は1200万円ということですので、相続人があなたと妹さんの2人とすると、あなたの遺留分は300万円です。
100万円以外は他の人に遺贈されていることを前提にすると、あなたがもらう分として遺言書に記載された100万円を控除した残額(すなわち、200万円)が遺留分減殺してもらえる金額になります。