相手方に遺産分割協議を拒否されていて、不動産と預金の分割ができていません。
なおかつ、預金を全部勝手におろされてしまいました。
不当利益返還請求で提訴しようと思ってます。
この場合、遺産分割調停と不当利益返還請求訴訟どちらを先にするべきでしょうか?
よろしくお願いします。
【実務家も常に悩むところです】
ご質問は、非常に実務的な問題であり、法律の専門家である弁護士であってもそれぞれの事案で常に悩む難しい問題です。
本来、このような問題はその事件でどのような資料がそろっており、どの程度の勝訴あるいは調停成立の見込みがあるのかによって判断が変わりますので、本ブログのような簡単な質問で正確な回答をすることはきわめて難しいです。
ただ、いくつか参考になりそうなケースを紹介しておきます。
【調停に向く事件、裁判に向く事件】
調停は相手方の同意があった場合に成立します。反面、相手方が同意すれば立証は不要です。
裁判は相手方の同意は不要ですが、自分の主張を証明する必要があります。
【こちらの主張に相手方が同意しそうにない場合は基本的に裁判】
あなたの主張に相手方が同意する可能性がない場合には、調停をするのは時間も無駄であり、当初から裁判で行くしかないでしょう。
しかし、不当利得を主張するのなら、裁判ではあなたは次の事実を証明する必要があります。
① 遺産である預貯金が引き出されている事実 ② その引き出した預貯金額を相手方が自分のものにした事実 を証明する必要があります。
この証明ができないと敗訴する可能性があります。
ただ、裁判の場合、裁判所を通じて関係証拠を集めるような方法を取ることも可能です。
【相手方が同意をする可能性がある場合は調停】
調停は互いの譲歩で成立するものです。
相手方が同意する可能性があり、あなたとしてもある程度の譲歩をしてもよいというのであれば、不動産の分割を含めて、全体として遺産分割の話を調停でまとめてもいいでしょう。
【どちらか、決めかねるときはまず調停を考える】
預貯金の不正引き出しについては裁判が可能ですが、不動産については調停で遺産分割するしかありません。
そのため、裁判か調停かを決めかねるときは、まず、調停を出す方法があります。
この場合、預貯金の引き出しについては話がまとまらなかったが、不動産の分割だけでも先にまとまる可能性もないわけではありません。
そのため、まず、調停で様子を見て、相手方の態度が強硬であれば調停は不動産に限定し、預貯金の引き出しは調停から外して、訴訟をするということがいいでしょう。
この場合、調停と訴訟が同時進行で進むことになります。
【やはりケースごとの判断が必要】
以上、いくつか考え方の参考になりそうなケースを挙げてみました。
ただ、このような実務的な問題はやはりケースごとに判断せざるを得ないところがあります。
今回のような状況であれば、具体的な事案を確認した上で、証明の可能性の検討も必要になりますので、ぜひお近くの相続に詳しい弁護士に相談されるとよいでしょう。