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実例Q&A

遺留分侵害額請求をする際に遅延損害金分も請求できるか【Q&A №686】

2020年8月3日

【質問の要旨】

不法行為損害賠償請求権を行使する場合、遅延損害金も遺留分請求できるのか

 

 

 

 

【回答の要旨】

・遺留分侵害額請求をする際に遅延損害金分も請求できる

・遅延損害金の発生時期は不法行為時から

・利率は時期によって異なります

 

 

【ご質問内容】

大沢先生のQ&A №614「不正出金混同損害賠償」の記事を読ませていただきました。

この件に関連して質問させていただきます。

Aの(2)遺言がある場合の混同について、

2男3男が不法行為損害賠償請求権を長男に対して行使する場合、

行為時からの遅延損害金3%(以前は5%)も併せた額の3分の1の金額を遺留分請求できるのでしょうか。

期間は行為時から相続開始時でよいのでしょうか。 

 (トップさん)


 ※敬称略とさせていただきます。

 

№614の概要】

№614は次のような事案でした。

《被相続人母の生前、長男が勝手に金を使っていた。

長男は遺言書で母の遺産の全てを相続した。

そのため、母が有していた長男に対する不法行為償請求権は長男が全て相続した。

そうすると長男は不法行為損害賠償の債務者であるとともに、相続により母の権利の全部を取得したので債権者でもあるが、債権者と債務者の地位をかねているので、混同により消滅するように見える。

しかし、他の相続人である次男と三男が遺留分減殺請求をした場合、損害賠償請求権は次男らの権利になるので、遺留分の限度ではあるが、混同で消滅せず、長男に損害賠償請求ができる。》

 

【遺留分侵害額請求をする際に遅延損害金分も請求できる】

本体の権利(損害賠償請求権)を請求することができる場合には、その不払いの時に発生する付随的権利である遅延損害金(遅延利息)も請求できます。

遺留分減殺請求をした場合、次男らは遺留分尾限度で本体の損害賠償請求権を取得します。

又、本体の権利に伴って発生する遅延損害金債権も。本体権利に付随するものとして、相続の対象になります。

そのため、次男らは本体の損害賠償権とともに、遅延損害金の請求が可能です。

 

【遅延損害金の発生時期は不法行為時から】

遅延損害金がいつ発生するかは、確定期限があるときにはその期限が到来したとき、期限の定めのないときには請求したときから発生します(民法412条参照)。

ただ、「不法行為に基づく損害賠償債務は、なんらの催告を要することなく、損害の発生と同時に遅滞に陥る」という裁判例(最高裁昭和37年9月4日判決)がありますので、不法行為の場合は、不法行為時から遅延損害金を請求できます。

 

【利率について】

2020年4月1日から施行された改正民法で遅延損害金の利率は原則として年3%になりました(改正前の利率は年5%)。

この法律改正により、請求できる日が上記日以降は年3%、それまでは5%の利率で遅延損害金が計算されます。

No.614の質問では、2020年4月以前の質問であり、当然、長男が母のお金を勝手に使用という不法行為が発生したのは同時期以前となりますので、改正前の年5%の遅延損害金が請求できるということになります。

(弁護士 大澤 龍司)

 

 

 

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