私(既婚女)の実家は代々資産家です。
独身時に父が亡くなり、私は○千万の預金を相続し、兄と母は土地を相続しました。
その際母と「(結婚したら)この預金は家を買うのに使う」と口約束をし、通帳と印鑑を預けました。
その後、私は母の反対の元結婚して家を出ましたが、父の遺産をもらったことや母にも相当な財産がある=お金にかこつけて私達の家庭に干渉し、婚姻生活に支障をきた
すので、遺留分放棄をして、実家との金銭的関係を断ち切りたいと思います。
また、私名義で多額の貯金をし生前贈与しているように母から聞いておりますが、銀行や印鑑、金額などは全く知りません。
結局、家は私達の自己資金+ローンで買いました。
母は「家を買うという条件で遺産をわけたのだし、使わないなら名義替えに応じなさい」と言っています。
遺留分放棄は、相応の対価が履行されている事が条件のようですが、上記のように確かに口座に相応のお金(最低でも○千万の遺産)はあるものの、印鑑や通帳は母が握っており、実質私の管理下にありません。
遺産+生前贈与の通帳や印鑑を、私が持っていなくても、遺留分放棄は許可されますでしょうか?
裁判所では、実際に私が管理しているか否かまで調査したり、母親(被相続人)にそれらを私に引き渡すよう命令が出たり、母親に照会などするのでしょうか?
また、遺産を返せという母に従うべきでしょうか?
ご教示ください。
【遺留分放棄は対価なくとも許可される場合がある】
遺留分の放棄とは、予め遺留分を請求しないことを約束することです。
遺留分を放棄することは原則として自由です。
そして、相続が開始する前に遺留分を放棄するときは例外的に家庭裁判所の許可が必要です。
今回の質問は、遺留分を放棄することができるかということなので、現在生きている母の遺産に対する遺留分放棄という前提で回答します。
相続が開始する前に遺留分を放棄するために家庭裁判所の許可が必要とされている理由は、他の相続人から不当な強制を受けて遺留分を放棄させられることを防ぐことです。
家庭裁判所は遺留分放棄をする必要があるのか、更に遺留分放棄の対価を受け取っているかどうか、などをチェックします。
裁判所HPの遺留分放棄の許可申立書には対価を要求するかのような記載がありますが、許可判断の重要な要素として対価の有無が考慮されることが多いため、わざわざこのような記載をしているものと思われます。
ただ、対価を受けていることはとても重要な判断材料ですが、絶対の要件ではありまん。
対価を受けていなくとも、遺留分の放棄に合理性及び必要性があれば、遺留分放棄の許可が出ることもあり得ます。
【通帳の引き渡し命令などはしません】
遺留分放棄の許可申立の当否は、主として提出された資料に基づき判断され、不足や疑問があれば、裁判所から申立をした人に問い合わせがあったり、資料の提出を求められることはありますが、それ以上に母に対し調査が入ったり、通帳を引き渡すよう命令が出たりすることはありません。
【父の預金は誰のものか・・】
父の遺産のうち、兄と母は土地を相続し、あなたは預金を相続されました。
ただ、遺産分割の際に「(結婚したら)この預金は家を買うのに使う」と口約束をし、通帳や印鑑を預けたが、その遺産の預金を使わず、自分達のローンで家を買ったことから「家を買うという条件で遺産をわけたのだし、使わないなら名義書替えに応じなさい」と母が言っておられるようです。
さて、このような状況の中で、《預金の名義を変える必要があるのか》という問題があります。
いろんな考え方があるでしょうが、次のような考え方も可能でしょう。
まず、遺産分割で取得した財産が、兄、母とあなたの3者でほぼ金額的に等しいか、あなたの方が少ないようであれば、預金はあなたが相続したのであり、家を買うに使うというのは、あなたが自分の取得した遺産の使途を言ったに過ぎません。
通帳等はそれまで、母に預かってもらっているだけという理解も可能でしょう。
そのような立場から言えば、あなたの方から通帳と印鑑の引き渡しを母に主張することも可能かもしれません。
逆に、あなたのもらった金額が兄や母よりもはるかに多いということであれば、預貯金の分割のし直しという解決もありそうです。
【ぜひ、弁護士に相談を!】
あなたの取得した父の預金が誰のものかについては、いろんな見解がありそうです。
出来れば、法律の専門家である弁護士に相談されることをお勧めします。
その上で、弁護士の意見を参考にして、調停などによる柔軟な解決を図られるといいでしょう