【質問の要旨】
遺贈された口座にお金を移した場合
【ご質問内容】
被相続人Aが、遺言書で相続人Bに遺贈を記したA名義の銀行口座があります。
※敬称略とさせていただきます。
【不法行為は成立しない可能性が高い】
不法行為は損害を受けた時に、その被害者が加害者に損害の賠償を求めるものです。
今回の、被相続人Aの口座間の金銭の移動の場合について考えます。
この場合、被害者がAだとすると、Aは、自分の口座間で財産の移動があったことは間違いないのですが、それだけで、金銭的な損害を受けていません。
そのため、損害がなく、不法行為にはならない可能性が高いでしょう。
次に、他の相続人(例えば、あなた)の立場に立てば、Bの行為であなたがもらう額は減少するかもしれません。
しかし、その行為の時点では、あなたは将来、相続を受ける立場(推定相続人)ではあっても、未だ、具体的な相続権は発生しておらず、損害はないといわざるをえません。
そのため、あなたに対する不法行為も成立はしないと判断されます。
【あなたはどういう方針で対処するべきか】
あなたがこの問題に関与できるのは、Aが死亡した後です。
その時点では、あなたは相続人になっていますし、Bの行為によりあなたのもらう額が減額されているとしましょう。
このような場合のあなたの対処方針ですが、《Bのした口座間移動はAの意思に基づかないものであり、無効である》という点で、Bを攻めるといいでしょう。
口座間移動が無効とした場合、Bはその口座間移動で移った増額分を取得できないはずです。
その法的構成をどうするかは、やや難しい面があるので、相続に詳しい弁護士に相談するといいでしょう。
その際は、口座間の金銭の移動の手続きをBがしたという証拠も必要です。
口座の送金の依頼書がBの筆跡なのか、また、その際、BがAの意思に反してそのような行動をしたという証拠があるのか、それらもきっちりと押さえておくといいでしょう。
いずれにせよ、弁護士に相談され、法的構成、立証方法等を綿密に協議されるのがいい案件だと思います。