【質問の要旨】
祭祀の費用として預貯金を託したい
【ご質問内容】
預貯金を相続させるのではなく、葬儀や供養とお墓の存続にかかる費用として、名前を継ぐ者に託したいと思っています。
どの様に遺言書を作成したら良いかお教え下さい。
2名の子供がおりますが。金銭感覚がしっかりし、供養をしている者に預けたいと思っています。
【遺言で祭祀の承継者を定める】
葬儀・供養及びお墓の存続を託すということですが、そのような役割は法律上、《祭祀の承継者》ということになります。
さて、遺言で《祭祀の承継者》を定めることはできます。
但し、当然のことですが、《金銭感覚がしっかりし、供養をしている者》というようなことを遺言書に記載しても効力はなく、具体的な氏名の記載が必要です。
【祭祀の費用のために使用を実現させるには・・負担付遺贈では難しい】
考えられるのは、
① 遺言で負担付遺贈をする。
② 遺言信託をする。
のいずれかの方法です。
まず、①の方法の場合、遺言で祭祀の承継者に預貯金は相続させる(遺贈する)としたうえで、これらの預貯金は祭祀の実行に使わなければならないという負担も記載しておくことになります。
ただ、質問にあるように預貯金を相続させたくないというのであれば、この方法はとれません。
また、このような負担付遺贈をしても、本当にそのような目的に実行されるのかが疑問です。
さらに、仮に負担が実行されない場合には、法律上は負担付遺贈の遺言の取消を裁判所に請求することも可能です(民法1027条)が、現実問題としてそこまでするような例は少ないでしょう。
そのため、①の負担付遺贈はお勧めできません。
【遺言信託の方がお勧め】
信託法は遺言信託という制度を定めています(同法3条2号:末記をご参照ください)。
遺言で財産(預貯金等)を委ねる人(受託者)を定め、その受託者に祭祀の費用として《祭祀の承継者》に金銭を渡すことを委託するのです。
信頼できる受託者に金融資産を託して祭祀のための費用を管理してもらい、《祭祀の承継者》の要請に応じて費用を支払ってもらうのです。
このような定めをしておくことによって、受託者に信頼できる人を選べば、その人がきちんと《祭祀の承継者》に必要な金銭を渡してくれるでしょうし、もし祭祀に使われないのであれば、そのようなお金を支払わないということになります。
次に、遺言では細かなことは定めることは少ないので、生前に受託者との関係で細かなルールを決めておく必要があります。
また、受託者は監督という面がありますので、相続人でない方が望ましいです。
ただ、相続人が遺産分割をする前に速やかに受託者に遺産を移動させる必要がありますので、遺言書は検認という時間のかかる手続きが不要で、速やかに実行が可能な公正証書遺言でするのが望ましいです。
いずれにせよ、遺言信託についての知識がある弁護士と相談され、あなたの希望がかなえられるような方策を考えられるといいでしょう。
【信託法3条2号】
第三条 信託は、次に掲げる方法のいずれかによってする。
二 特定の者に対し財産の譲渡、担保権の設定その他の財産の処分をする旨並びに当該特定の者が一定の目的に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべき旨の遺言をする方法