不動産賃貸業の手伝いをしていた次男にお金の管理を任せていました。
次男は自分名義で口座を作り私の不動産収入が振り込まれるようにしていました。
15年前に大喧嘩をし次男はその口座の通帳と印鑑を持って出て行ってしまいました。
持ち出した金額は私の財産の3割強です。
返還請求裁判はせずに最終的に次男が持出した財産相当額が次男に渡って残りの財産が長男に渡ればそれでいいと考えています。
ただしこの相続で1円も次男には渡したくありません。
そのため「全財産を長男に相続させる。」と遺言書を書くつもりでした。私は「遺留分超の財産が次男に渡っているため新たに遺留分を請求されることはない。」と考えていました。
ところが税理士さんは「その持出したお金が特別受益にあたるならこれ以上遺留分として次男のもとに財産が移転することはない。
しかしこれが特別受益にあたるかどうかは弁護士さんに確認した方がいい。
学費や住宅資金なら何年前のものでも特別受益にあたるが、贈与となると原則は生前1年前のものに限るから。
またこの場合は持出しという特別なケースだから注意が必要です。」と言っていました。
あと「特別受益にあたったとしても被相続人の意図がわかるように弁護士さんに遺言書の文面を考えてもらった方がいい。」とも言っていました。
そこで2つ質問です。
①持出したお金は特別受益に該当しますか?
②意図通りに相続させるために遺言書にどういう文言が必要ですか?
【特別受益となるのか?】
特別受益になるのは「生計の資本としての贈与」の場合です。
質問のケースでは、次男の方があなたの収入を勝手に持ち出した点からは、上記の贈与にはならない可能性が大です。
しかし、次男は貴方の収入を返還するという債務がありますので、貴方がこの債務を免除したという点から考えると上記の贈与に該当する可能性がありそうです。
「生計の資本としての贈与」とは生計の基礎となる贈与は一切含まれ、かなり広い意味に解されていますし、債務の免除が「相続分の前渡し」であるとして「生計の資本としての贈与」に該当し、特別受益と判断した裁判例もあります。
ただ、このように考えても、それならいつ債務免除したのだという反論もありそうですし、今から急いで債務免除したとしても、それは時効で消滅した債務ではないかという反論もありえます。
従って、質問のケースでは間違いなく特別受益に該当するとまでは言い難いです。
この点については、専門家である弁護士と相談され、アドバイスを受けられることをお勧めします。
【遺言書の記載について】
遺言書に記載するとすれば「長男に私の全財産を相続させる」と記載した上で、次男に相続させない理由として、
①次男があなたの財産を持ち出したこと
②次男に対する債務は免除する(あるいは免除した)こと
③この免除は次男に生計の資本として財産を与える意味でしたものであること
④この免除で次男には遺留分以上のものは渡していること
を記載するのがいいでしょう。
ただ、注意するべきことは、あなたが遺言書に、次男に特別受益があると記載したからといって、裁判所がそのとおり認めるものではないということです。
又、この種のケースでは次男が反発して納得しない可能性も高いと考えられます。従って、遺言書の記載は、あなたが次男に相続をさせないが、次男には納得して欲しいという希望を伝える程度のものであるとご理解ください。
☆ワンポイントアドバイス☆
次男の持ち出しは15年前ですので、証明手段があるのかという点が気になります。
特別受益かどうかが争われるのはあなたの死亡後ですので、次男としてもそれなり反論をするでしょう。
そのため、次男の持ち出しを証明する手段を残しておく必要があります。