先日祖母が亡くなり、現在父と叔父(父の弟)の間で遺産分割について協議中です。
30数年前に祖母がアパートを建てたのですが、その際建物の名義は祖母、土地の名義は父にしていました。
長男に家を継がせるという考えが強く、先々のことを考えてのことだったようです。
アパートの家賃収入などは全て祖母で、父はこのアパートに関する事には一切ノータッチでした。
固定資産税はずっと父が払ってきました。
叔父の主張は、この土地は生前贈与に当たるから法律上それも遺産に加えた上できっちり半分ずつにするのが当然だというものです。
特別受益に当たるのでしょうか?
【特別受益にあたる可能性もありますが・・】
土地が父名義ということですが、どのような原因で父名義になったのでしょうか。
ここでは父が名義を取得するに至った過程によって様々な可能性が考えられます。
①まず土地が祖父母の遺産であるかどうかが問題となります。
例えば祖父母が土地を購入するときに祖父母がその代金を支払い、名義だけを父にしたとい事情がある場合には、その土地の所有者は祖父母です。
名義が誰であるかはさほど意味を持ちません。
ここでは特別受益の問題にはなりません。
②次に元々祖父母の土地であったものを、名義を父に変更したという事情がある場合には、その登記原因は贈与であって、特別受益の問題になります。
また、父自身が売買代金を支払ったが、その資金は祖父母からの援助である場合には、特別受益の問題となります。
このように、父名義の土地でも、登記に至る事情により回答が異なってきますので、登記簿謄本を確認して登記原因を調査し、かつ、購入した土地ということであれば売買の実情を調査する必要があるでしょう。
【固定資産税の支払いは考慮される可能性がある】
《土地が実質上、父のものである場合》
父がアパート(土地及び建物)の固定資産税を支払ってきたということですが、土地が父の所有物とされる場合(前項①③の場合)には、当然、父が土地の固定資産税の支払いをする必要があり、この分を祖母の遺産分割で返還を求めることはできません。
但し、父としては、自分の土地の上に祖母の建物があり、土地を無償使用されていることになります。
祖母としては、土地の賃料の支払いを免れているわけですから、過去の賃料相当額を特別寄与として、遺産分割の際に請求することも考えていいでしょう。
あるいは、無償使用させたこと自体(使用借権)により、祖母が利益を受けているのですから、その無償使用できた利益自体を特別寄与として請求することも可能です。
《父の土地所有権が認められず、祖母の遺産になる場合》
前項の②の場合であれば、土地は祖母の遺産になります。
その時には、父は、本来の土地所有者である祖母の固定資産税を支払ってきたわけですから、祖母の遺産が減少することを防いだとして、固定資産税の支払い分を祖母の遺産に対する特別寄与として請求することが可能でしょう。