【質問の要旨】
母の葬儀費用の負担分として相続割合に応じた額を香典という形で葬儀を取り仕切った兄に渡したが
別途、葬儀費用の負担分を請求された。
どう考えればよいか。
【ご質問内容】
先般、母が亡くなりました。以前、父が亡くなった時、長男が喪主を務め、葬儀費用も負担してくれました。
土地や一切の資産は、母も、他の兄弟も遺産放棄して、長男が相続しました。
今回、母の葬儀があり、前回同様、香典として、葬儀費用を兄弟の数で割った額を喪主の長男にわたしました。
葬儀も、喪主の家族が仕切りました。
今回の葬儀で、父の時と違っていたのは、兄弟以外からの香典は受け取っていません。
先日、葬儀費用の当分割の金額を、持ってくるように要求されました。
わたしとしては、その金額は香典で持参しております。
どう考えればよいものでしょうか。
よろしくお願いいたします。
※敬称略とさせていただきます。
【香典と葬儀費用について】
葬儀費用や香典は法律上の制度ではなく、地域の慣習により行われているもので、裁判例などでも明確な判断を示したものが少ないです。
ただ、葬儀費用が相続債務でないことについては、ほぼ異論がないように思います。
葬儀は喪主が行うものであり、その費用は喪主が負担するのが原則です。
ただ、相続人で葬儀に出席したものがいれば、公平の観点から相続分に応じた程度の負担をさせるという解決が、遺産分割調停でよく行われます。
次に香典ですが、葬儀費用の分担するようなときは、かかった葬儀費用から香典分を差し引きすることで解決している例が多いです。
葬儀費用を分担させながら、香典は喪主が取るというのは公平の観点から認めがたいということです。
更に話を進めていけば、香典返しをする場合はその分はどうするのかという問題も出てきます。
遺産分割調停の現場では、香典返しの話が出ても結局、どこかで金額に折り合いをつけて、話をつけてしまうことが多いです。
【今回の質問者の対応】
今回の質問者の対応を考えてみましょう。
まず、質問者としては、葬儀費用は本来、喪主が負担するべきものだということを最初に主張しておく必要があります。
弁護士なら、葬儀費用の分担を求める根拠は何かを明らかにせよというところでしょうか。
次に、今回の葬儀では一般の人から香典を取っていないが、相談者の方たちが香典を支払い、かつ、その額が一般の香典の額より高額であったのは葬儀費用分担の意味合いがあったと主張するといいでしょう。
なお、葬儀費用という明確な形では渡しておらず、香典という形で渡している点がやや気にかかります。
この点については、兄から聞いた葬儀費用を相続分に応じて算出した額であること、もらった兄としては当然、葬儀費用分担の意味合いをわかっていたはずであると主張されるといいでしょう。