【質問の要旨】
・父が亡くなり、土地の相続のため遺産分割協議中。相続人は長男と次男(相談者)
・生前、父より口座に合計155万円入金があり、内訳は子供の学費として借りたものと子供へのお小遣い
・長男より、父からの入金は生前贈与にあたるので今回の相続は放棄するよう言われた
・父からの入金は生前贈与にあたるのか?
【回答の要旨】
・父からの借入金については、生前贈与ではないが、返済の証明が必要
・子供へのお小遣いであることが証明できれば、あなたへの生前贈与ではないが…
・土地の評価額によっては、一部の財産を相続できる
【ご質問内容】
遺産相続の件で教えていただきたくメールさせていただきました。
昨年 父が亡くなり(母は既に他界)、現在 父名義の土地を相続するにあたり兄弟間で遺産分割協議を行っております。
相続人は長男と次男(私)です。
先日 長男から連絡があり、父の通帳をチェックしていたところ父から私宛に何回かお金が振り込まれていたと、その合計金額が155万円だということでした。
当然のことながら私は父からのその入金を把握しています。
なぜならそのお金の内訳は、私の子供の学費として父から借りたものと、また父からその子供へのお小遣いでした。
学費で借りていた分については全額ではありませんが父が元気だった頃にお金を何回かに分けて手渡し、一部返済とさせていただきました。
ところが長男が、父から私宛に振り込まれたそのお金は「生前贈与」にあたるので、今回の相続は放棄するようにと言ってきました。
そこで質問させてください。
今回のように生前 父から振り込まれたこのようなお金は「生前贈与」にあたるのでしょうか?
ちなみに私は父名義の土地を売却して兄弟で分ける考えでしたので、長男の主張には納得がいきません。 どうかご教示願います。
(才善)
※敬称略とさせていただきます。
【父からの借入金については、生前贈与ではないが、返済の証明が必要】
まず、父から借り入れた金員については、「借り入れ」である以上「贈与」ではありません。
ただ、借りたのであれば、長男は、父のあなたに対する返還請求権の2分の1を相続しておりますので、2分の1に相当する額の返済をあなたに対して求めてくるでしょう。
そのため、あなたが父にすでに返済しているというのであれば、長男に対して、返済の証明をすることが必要です。
返済を証明するものとしては、銀行の振込履歴や父からの領収書などがあげられます。
上記のような返済を証明できる資料がなければ、長男からの請求を免れることはなかなか難しいように思われます。
【子供へのお小遣いであることが証明できれば、あなたへの生前贈与ではないが…】
また、子どもへのお小遣いとしてもらった分については、実際に子どもに対してお小遣いとして渡していれば、相続人であるあなたへの贈与ではなく、孫への贈与ということになりますので、あなたに対する生前贈与ではありません。
ただ、一旦あなたの口座に振り込まれているのであれば、あなたの方で、子どもへの贈与としてもらったものであることを証明する必要があります。
その証明ができなければ、あなたへの贈与であるという長男の主張を退けることは、なかなか難しいと思われます。
【土地の評価額によっては、一部の財産を相続できる】
なお、長男はあなたに財産を相続させず、土地を自分一人で相続したいと主張しているようですが、万が一、返済の事実や子供へのお小遣いであることを証明できなかったとしても、土地の評価額によっては、あなたも一部財産を相続することができます。
あなたの特別受益が155万円で(ここでは、わかりやすいように借り入れの話を除いて考えています)、土地の価値も155万円なら、長男が土地をすべてもらうということになるでしょうが、土地の価値がそれより高ければ、長男がもらいすぎの状態になります。
そのため、価値の高い土地を長男が取得するのであれば、あなたは一部をお金でもらって帳尻を合わせるべきということになります。
(弁護士 岡井理紗)