【質問の要旨】
・母が認知症で入院中、母の年金と貯金を長男が使い込んでいる
・通帳等の履歴を何年まで遡って調査することが可能か
・時効はあるか
・裁判の期間はどの程度か
・費用はどのくらいかかるのか
【ご質問内容】
母親は、高齢で、認知症で入院していて、退院の見込みはありません。
万が一の事があった場合の事を考えています。
数年前から、母親の年金と貯金を長男が使い込んでいます。
これは、通帳等を確認すれば、わかると思いますが、何年前までさかのぼって調査する事が可能でしょうか?
時効はあるのでしょうか?
また、もし、裁判を起こしたとして、どのくらいの期間を要するのですか?
費用は、どのくらいかかるのでしょうか?
【生きている母の預金を調べることはできない】
認知症であっても、母が生きているのなら、その預金の履歴を調査できるのは、原則、母のみです。
将来、母が亡くなって、相続人になるかもしれない立場である人(推定相続人)からの照会であっても、母が生きている以上、金融機関としては個人(母)のプライバシーを理由に回答しません。
もし、どうしても調べたいというのなら、母の同意を取り付けたうえで、金融機関に連絡し、代理人でも履歴照会ができるかどうかを確認されるといいでしょう。
【後見人をつけるという方法もある】
母の認知症の程度がひどいのであれば、成年後見人の選任申立をするという方法があります。
成年後見人が選任された後は、後見人が財産管理をしますので、その後の不正出金を防止することができます。
また、その申立に、不正出金をしている点を強調すると、選任された後見人が不正出金の点を調査することもありますし、出金分の取り戻しもしてくれる場合もあります(但し、このような動きをしない後見人もあります)。
後見人が過去の履歴を調査しても、その内容はあなたには知らされないのが原則です。
【履歴の調査は通常5年ですが・・】
前項までに記載したように、母またはその後見人でないと調査できないのですが、それ以外の質問の内容にも簡単に回答しておきます。
金融機関は、通常、5年間分の回答をすることが多いです。
それ以上の期間の調査が必要なら、さかのぼって調査が必要である特別な理由を説明すれば、10年前までなら調査ができる可能性があります。
【時効はあるのか】
調査の時効というようなものはありませんが、10年を経過すると、金融機関としては、帳簿保存期間経過を理由に回答をしない場合が多いです。
なお、母の同意を得ない使い込みについては、生前の母から兄に対して返還請求が可能ですが、その請求は不当利得返還訴訟で請求する場合には、使い込み時点から10年間で時効にかかります。
母の同意を得て、贈与を受けているという場合には、特別受益となり、その場合には時効はありませんので、全ての期間の特別受益が遺産に繰り戻されます。
【裁判や調停を起こした場合の期間・費用について】
母が生存している段階で不正出金の返還請求ができるのは母あるいはその後見人のみです。
相続が発生しない前に、調停や訴訟をしたいのなら、母の同意が必要です。
なお、調停ならは申立費用として印紙が1200円、郵便切手を数千円程度であり、期日は5回前後(期間でいえば6~8ケ月程度)のことが多いです。
裁判なら、仮に金1000万円の返還請求すると、訴状の印紙代5万円と郵便切手が数千円程度かかりますし、期間は判決まで2年間程度かかります。
但し、期間などは案件により異なりますので、あくまで目安です。
なお、弁護士に依頼する費用については弁護士に法律相談する際、確認されるといいでしょう。