【質問の要旨】
父からアパート(建物のみ)を生前贈与した。
父の死亡後、妹から土地を含めた評価額を元に計算した金額を特別受益として請求されたが、どこまで特別受益とみなされるのか。
【ご質問内容】
平成23年に父より昭和63年に木造建築されたアパート建物のみ生前贈与を受け登記し、アパート経営をしておりましたが、27年6月に父が他界しました。
23年固定資産税評価額は、約二百万円、他界した27年は約百五十万円です。
相続人は私と妹の2人ですが、今になって、妹よりアパートの特別受益を主張しており、その評価は、収益還元法によれば、52,950,000円と固定資産税評価額とは、かけ離れた金額を請求されています。
その根拠は、土地も含めた価格のようで、年額収入4,236,000円、投資家期待利回り8%によるものだそうです。
しかし、土地は既に遺産分割により相続登記が長男である私に完了しております。
地元の不動産屋によれば、土地と建物を分けての評価は難しく言われております。
本来遺産分割におけるアパート建物だけの特別受益評価額は、どのようになるのでしょうか?
お忙しいところ、恐縮ではございますが、出来るだけ早急にご回答いただければありがたいです。
よろしくお願い申し上げます。
(敬称略で記載しております。ご了解ください)
【遺産分割協議が完了しているのかどうかで結論が異なる】
父は、生前にあなたにアパート建物を贈与したとのことですので、この生前贈与分は特別受益として遺産に持ち戻して、遺産分割をするべきものです。
ただ、質問には《土地は遺産分割によってあなたに相続登記されている》との趣旨の記載があります。
もし、既に父の遺産全部について遺産分割協議が終了しているのであれば、今更、妹としては特別受益分を遺産に持ち戻せという主張はできません。
妹の立場としては、遺産分割合意は錯誤や欺罔によるものであるとして、遺産分割協議の無効を主張するしかないということになります。
次に、遺産のうち一部(今回でいえば、アパートの敷地)のみの遺産分割合意をし、それに基づき登記を移転しただけで、預貯金や株式等他の遺産についてはまだ遺産分割協議が終了していないという場合には、いまだ特別受益の主張は可能ということになります。
【建物の評価は固定資産評価額が原則、ただし使用借権の上乗せもありうる】
仮に遺産分割がすべて終了していないということであれば、特別受益が問題になりえます。
その際の建物自体の評価は、遺産分割調停などでは固定資産評価額でされることが多いです。
もし、違う額を主張するのであれば、その証明として鑑定等が必要になります。
問題は建物額だけではなく、土地の使用権も生前贈与されたことになり、その価額を加算する必要があるということです。
土地の賃料などを支払っていないということなら、建物底地の使用借権の贈与があったとされることになります。
使用借権は土地価額の10~15%の場合が多いです。
もし、あなたが賃料を支払っていたというのであれば、借地権ということになり、底地価額の40~60%を加算する必要があります。
【評価の時点及び賃料はどうなるか】
特別受益の額の評価の時点は相続開始時の建物価額や底地の価額を前提として計算します。
なお、生前贈与を受けたのちの賃料収入などは、建物および底地利用権に含まれていますので、原則として、別途請求されることはありません。