亡くなった主人の相続放棄をしました。
市役所からの通知が届き、「死亡した方の年金から天引きされていた介護・国民保険料が、未支給年金を受給する資格のある遺族に還付される」とのことです。
それで、「還付請求書」に振込口座などを書いて出してください、との通知でした。
未支給年金は、妻が相続放棄をしても受け取れるとのことですが、主人が収めすぎた介護・国民保険料の還付も、受け取ってもよろしいのでしょうか?
年金生活者だったので、死亡後にさまざまな還付金があるのですが、相続放棄すると、受取ってもよいものといけないものがあるようで判断に悩みます。
【相続放棄した場合、遺産なら還付を受けることができない】
問題となっているのは
① 未支給年金
② 介護保険の還付金
③ 国民健康保険の還付金
といういずれも請求権です。
これらの権利が遺産になる場合には、相続放棄をすれば請求できません。
以下、個別に検討していきます。
【未支給年金は遺産ではない】
未支給年金については、末尾に記載した法律により、相続の規定である民法とは異なる支給順序が定められています。
そのため、裁判所の判決で遺産ではないという判断をされています。
そのため、相続放棄をしていても未支給年金を受け取ることができます。
【介護保険及び健康保険還付金は遺産である】
ところが、介護保険や国民健康保険の保険料の還付金はこのような特別の規定がないため、他の請求権と同じ扱いで、債権として民法の原則に従うことになり、遺産になります。
そのため、相続放棄をすると請求することができません。
【もらってしまうと不利益がある可能性があります】
もし、遺産である介護保険や健康保険還付金の還付を受けうると相続放棄ができなくなりますし、既に相続放棄をしていても相続放棄の効果を主張できなくなります。
相続放棄をするということは通常は被相続人の方の債務が多額である場合が多いということになります。
還付を受けたという事実を債権者が知ることはないとは思いますが、万一、債権者が及び健康保険還付金を受けたことを知った場合には、それらの債権者から被相続人の方の債務の請求を受けることになりかねませんので、ご注意ください。
《参照条文》
国民年金法第19条 (未支給年金)
1. 年金給付の受給権者が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき年金給付でまだその者に支給しなかったものがあるときは、その者の配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹であって、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは、自己の名で、その未支給の年金の支給を請求することができる。
2. 前項の場合において、死亡した者が遺族基礎年金の受給権者であつたときは、その者の死亡の当時当該遺族基礎年金の支給の要件となり、又はその額の加算の対象となっていた被保険者又は被保険者であった者の子は、同項に規定する子とみなす。
3. 第1項の場合において、死亡した受給権者が死亡前にその年金を請求していなかったときは、同項に規定する者は、自己の名で、その年金を請求することができる。
4. 未支給の年金を受けるべき者の順位は、第一項に規定する順序による。
5. 未支給の年金を受けるべき同順位者が二人以上あるときは、その一人のした請求は、全員のためその全額につきしたものとみなし、その一人に対してした支給は、全員に対してしたものとみなす。