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実例Q&A

使用貸借されている土地を生前贈与でもらった場合【Q&A №607】

2018年5月10日

【質問の要旨】

土地を生前贈与すれば使用貸借はどうなるのか

【ご質問内容】

使用貸借されている土地を【相続】した場合のみ、 賃貸人の義務を相続人は、承継する。

相続でなく、【譲渡】の場合は、 第三者は、義務を承継しない。

では、大澤先生、わからないので お手数ですがお教え頂きたいです。

【生前贈与】で、もらった場合は、 義務を承継するのでしょうか 承継しないのでしょうか。

(悩み中)


 

 ※敬称略とさせていただきます

 

今回は、土地を他人に使用させている土地の所有者(A)が、土地を第三者(B)に生前贈与した場合、BはAの義務を引き継ぐのかどうかという質問です。

【生前贈与の場合、使用貸借関係の権利義務は引き継がない】

ここでは特定承継と包括承継という概念を区別することが重要です。つまり、今回の質問の事案で言うと、①所有権が移転する場合なのか、②所有権だけではく契約上の地位も移転する場合なのかを区別する必要があります。

使用貸借した土地を相続した場合、相続人は被相続人が有する権利義務を包括的に承継します。

従って、使用貸人(ご質問内容では『賃貸人』とあります。)は、土地の所有権を取得すると同時に、使用借人に対して、土地を無償で使用収益させる義務を負います。

他方、使用貸借した土地を譲渡した場合、その譲受人は土地の所有権を取得します。このとき、契約上の地位までは承継されません。

契約は使用貸人と使用借人との間で成立したにすぎず、土地所有権を譲り受けた者はこれに拘束されることはありません。

従って、譲受人は使用借人に対して土地と無償で使用貸借させる義務を負いません。

それでは、生前贈与の場合はどうでしょうか。

生前贈与とは、被相続人が生きているうちに、その所有する財産を他者に贈与することです。

これは相続ではありません。

単なる所有権の移転です。

これは上記の①の場合に該当します。

従って、受贈者はその土地を使用借人に対して無償で使用収益させる義務を負いません。

上記の例でいえば、使用貸借契約はAとBの間の契約に過ぎず、BはCに対して土地を明け渡すよう求めることができます。

【損害賠償請求問題は発生する】

以上のように、Aが生前贈与したことにより、結果としてCは建物撤去せざるを得ず、多大の損害を被ります。

その点については、AがCに土地を利用させる義務があったのに、それを不履行にして損害を与えたということで、CがAに対し損害賠償請求してくる可能性もありますので、この点も考慮された上で、生前贈与あるいは撤去要求をするかどうかを判断されるといいでしょう。

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