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実例Q&A

私立大医学部の学費は特別受益か【Q&A №375】

2014年5月26日


 

養父が亡くなりました、私は養父と養子縁組をしています。私は実父に大学費用などを出してもらい、私が独立したときに母は養父と再婚しました。

養父は前の結婚で医師になった一人息子がいます。

医師であった養父ですが25年まえに彼の私大医学部の予備校費用や入学金、学費など彼に多大な費用が掛かり大変だったとよくこぼしていました。

これは特別受益になりますか?

記載内容  私立大学 医学部 学費

(花)


【医学部の学資、独立後の養子の2点が問題】

本件では、まず、第1点として、学資、特に私大の医学部(きわめて多額になる)の学資の支払いをしてもらったことが特別受益になるのかどうかが問題になります。

次に、あなたが養子になったのが、あなたの《独立》後であるという点が、特別受益問題にどのように影響してくるかという点も問題になります。

【学資の支払いについて】

2人の子供が相続人であった場合、一方は大学卒で、他方は高校卒で、いずれも被相続人から学資を出してもらったケースについて考えましょう。

親としては、子供たちにそれなりの教育を受けさせてやりたいと考えるのが普通でしょう。

ただ、その学力や本人の希望などもあり、一方は大卒、他方は高卒ということもありえます。

大卒と高卒の場合、大卒の人が特別受益を受けたという考えもあります。

しかし、大卒と高卒になった点に合理的な理由があれば、被相続人である《親の扶養義務の履行の範囲内であり、親の裁量》であるとして、特別受益にはならないというべきでしょう。

参考までにいえば、過去の判例で次のようなものがあります。

「……子供の個人差その他の事情により、公立・私立等が分かれ、その費用に差が生じることがあるとしても、通常、親の子に対する扶養の一内容として支出されるもので、遺産の先渡しとしての趣旨を含まないものと認識するのが一般的であり、仮に、特別受益と評価しうるとしても、特段の事情がない限り、被相続人の持戻し免除の意思が推定されるものというべきである。」 (大阪高裁決定平成10.12.6)

【私大医学部などの膨大な学費の支払いについて】

但し、学費の額が極めて高い場合、例えば本質問のように私大医学部ということになると、額が非常に多い(私が聞いているところでは、入学金や学費で5000万円を超すところも少なくない)のであれば、特別受益とするべきでしょう。

遺産全体の額とのバランス(たとえば遺産が10億円程度もあれば、それほど問題にするべきものではないでしょうが)を考えて、その学資支払い分が多額というのであれば、他の相続人間にとってあまりにも不利な結果になるような場合は、特別受益として考えてもいいというのが私の意見です。

【独立後の養子であることが結論に及ぼす影響について】

質問では、あなたは実のお父さんから学費を出してもらい、その後、あなたが、《独立してから養子になった》というように読み取れます。

もし、そうであれば、お父さん(養親)は実子さんに学資を出された当時、特別受益というようなことを考えてはいなかったのではないでしょうか。

養子になる以前は、いずれも当時のそれぞれの実親の扶養により、大学に行っていたのであり、その学費に差があったとしても、それは当時の実親の経済的な資力やあなたの志望等の問題であり、学費に差があってやむを得ない面があります。

特別受益が相続人間の不平等を是正する趣旨をもっている点を考慮すると、学費の差は、当時の状況としてはやむを得ないものということもできると思います。

又、養親としても、養子になる以前の実子の学費まで相続で問題にされるとまでは考えていなかったと推測すべきであり、持ち戻し免除が適用される可能性もあります。

ただ、今回の質問は、確定的な答えをできる内容ではありません。

そのため、できれば、相続に詳しいお近くの弁護士に法律相談され、より具体的な事情をお話された上で、弁護士のアドバイスを受けることをお勧めします。

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