本人の相続人は兄弟4人のみ。
遺産を全て従兄に遺贈する内容の公正証書遺言があります。
遺言執行者として兄弟の住所を戸籍附票から調べて、遺産目録を書留で送付したところ、うち1人分が「あて所に尋ねあたりません」で戻ってきてしまいました。
この場合、通知したことになるのでしょうか。
ならなければどうすればよいのでしょうか。
【遺言執行者のするべき作業】
遺言執行者になった者は、相続財産の目録を遅滞なく作成して、相続人に交付しなければならないと法律で定められています。
そのため、遺言執行者の立場にあるあなたとしては、遺言者が死亡したこと、遺言があったことを相続人に通知するとともに、財産目録を作成して交付する必要があります。
質問のケースでは、従弟が遺言で全財産を取得するので、兄弟は法定相続人であっても、相続財産をもらえず、又、兄弟だから遺留分請求もできませんので、通知や財産目録の交付が不要ではないかという方がいるかもしれません。
しかし、公正証書遺言があってもそれが必ずしも有効とは限りません。
法定相続人である兄弟は遺言が無効を主張して、相続を求める場合もありますし、又、遺産が自分のものだという方もいるかもしれません。
そのため、質問のようなケースでも遺言者の死亡、遺言の存在、財産目録の交付は必要であり、それをしなかったということで執行者が損害賠償を命じられた裁判例もあります。
【質問のケースでは通知したことにはならない】
参考までに言えば、受取を拒否したということであれば、受け取れる状況だったことから通知したとされる可能性がありますが、「あて所に尋ねあたりません」で戻ってきたのであれば、通知したことにはなりません(戸籍附票で調べた住所に、しかも書留で送付した場合でも結論は同じです)。
【執行者はどこまで相続人の所在調査をするべきか?】
執行者がどこまでするべきかについては、法律にはなにも定められていません。
これまでの裁判例もそれぞれのケースに応じた判断をしており、はっきりとした基準があるわけでもありません。
遺言執行者にどの程度の報酬が支払いされるのか、又、執行者の職業が法律関係であるのかにより、調査の程度も異なってくる可能性があります。
質問のケースに即して言うなら、最低限、届かなかった人の居所を知っているかどうかを他の兄弟に確認し、最後の住所地が近くの都道府県であれば、その地の近所の人たちに聞き込みにいく等の調査作業をしておくのが無難でしょう。