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実例Q&A

事実婚の夫婦がお互いのことを任せるための書面を作成したい【Q&A №675】

2020年3月5日

【質問の要旨】

・未入籍の夫婦(お互い独身籍)。

・「お互いの全部をお互いに任せます」との一筆を交わしたいが、どのようにすればいいか?

 

 

 

【回答の要旨】

・婚姻していないことで紛争が生じることがある

・生前の対策は任意後見で対処できる

・葬儀でもめないために死後事務委任契約を定める

・遺産の相続は紛争必死であるから、遺言書で対処する

・遺言書は公正証書遺言でする

 

【ご質問内容】

主人とは25年ほど一緒に生活をしておりますが籍は入れておらず別世帯となっております。

お互い独身籍です。

そこそこ年齢も重ねており入院経験もあるので今後のことで色々と心配な事がありますのでお互いの全部をお互いに任せますとの一筆は交わして置きたいと考えております。

その時はどのような文章を作成しておけば大丈夫でしょうか?宜しくお願い致します。

(junjun)


 ※敬称略とさせていただきます。

 

【婚姻していないことで紛争が生じることがある】

婚姻届出をして法律上の夫婦になった場合は簡単に解決することでも、同居だけのパートナーの場合には、相手のパートナーの親族との間で紛争が生じることがあります。

例えば、

① 生前に同居のパートナーが判断(意思)能力を失ったときに、もう一方のパートナーが財産管理をしていれば、《あなたはどういう権限で財産を動かしているのか!》という話が持ち上がることも考えられます。

② また、死後には次のような問題も生じます。

葬儀の主催者やその費用をどこから出すかについて、親族の方から《あなたはどんな権限があって、葬式をするのか》という詰問も考えられます。

また、死亡した同居のパートナーの残した動産などの廃棄処分なども、親族の方からの妨害でできないことも想定する必要があります。

③ 遺産分割をめぐっては、同居のパ―トナーは現在の法律では相続人ではありませんので、紛争は必至だと考えておく必要があります。

【生前の対策は任意後見で対処できる】

ある人が判断能力を失ったときは、成年後見人の選任ができます。

ただ、事実婚の場合は成年後見の申立権がなく、親族によって申立てられたとしても、通常の場合には、裁判所は家族や親族の中から後見人を選びます。

同居のパートナーであるあなたが後見人になりたいと言っても、裁判所は親族(推定相続人)の意見を聞きますので、その段階で反対が出てくれば、裁判所はあなたを後見人には選ばないでしょう。

長年連れ添ったパートナーの面倒を見たいというのなら、是非、任意後見契約を締結しておくといいでしょう。

また、判断能力を失わない場合でも、緊急な入院などの場合にそなえて、財産管理契約を結んでおくことも必要です。

【葬儀でもめないために死後事務委任契約を定める】

葬儀はいつ発生するかもしれない緊急事態です。

そのため、同居のパートナーに葬儀の手配などをしてもらいたいなら、遺言書で葬儀の主催者を定め、その費用をどこから出すかも明らかにしておく必要があります。

遺言書に葬儀の重要な点について書き、細かなことはパートナーとの間での死後事務委任契約で定めておくといいでしょう。

【遺産の相続は紛争必死であるから、遺言書で対処する】

現在の法律では、同居のパートナーは相続について何らの権利もありません。

そのため、法定相続人との間での紛争が必至です。

このような紛争を回避するために、遺言書を作成し、《遺産は同居のパートナーに》と明らかにしておく必要があります。

また、遺言書などでは大まかなことしか書けません。

そのため、財産の処理についての細かなことは死後事務委任契約で定めておくといいでしょう。

【遺言書は公正証書遺言でする】

遺言書については、偽造したなどと言われないために、公証役場で作成する公正証書遺言にする必要があります。

公正証書遺言なら、自筆遺言のような裁判所での検認の手続きが不要ですし、後でその効力を覆される場合も少ないです。

また、相続開始後、早期に遺言の執行に着手するために、遺言書の中で、遺言執行者をパートナーに指定しておくとよいでしょう。

同居のパートナーについては、法律で保護される場面は少ないです。
法律的な知識を活用して、できる限り、自分たちの身を守る方策を考えていく必要があるでしょう。

(弁護士 大澤龍司、弁護士 石尾理恵)

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