母が癌になって4年がたちます。
2年ほど前に再発し、あまり長生きはできないのかなと、覚悟はしております。
私は公立大学に落ちて私立大学に進学し、私立の大学院を出ているため、母は「私にはお金がかかっている」と言って財布のひもがきびしいです。
一方、ずっと地元に住んでいる姉には、土地を買ってあげ、姉妹で使用していたグランドピアノも、二人が着用した100万近い振袖も、すべて姉のものだと言っています。
また、15万の着物を姉に買う一方で、私にはそのような買い物をしてくれたことがありません。
先日も私の息子のお宮参りの祝い着は弟のしみだらけのものでよいと言い張ったのに、姉の娘に30万以上のお雛様を買おうとしています。
文句を言うと、私のためには「絶対何もしない」と余計にエスカレートしていきます。
小さな額ではありますが、生前贈与の偏りがつもりつもって、悲しくなってきました。
相続に関することも、姉にだけは伝えてあるようです。
こうした事態は、どのように解決していくことがベストでしょうか。
母が元気なうちに何かしら手をうっておおいた方がよいのでしょうか。
記載内容 生前贈与 対策 特別受益 生前の相続対策 学資 土地購入
【生前の財産贈与は自由だが、相続になると特別受益で遺産に持ち戻されることがある】
お母さんがその生前に、自分の財産を誰に贈与しようが、それはお母さんが自由にできることです。
お母さんがお姉さん側だけに贈与したり、特別扱いをしたとしても、あなたとしては何も言える立場ではありません。
しかし、お母さんが死亡され、相続が発生した場合には、生前贈与分が遺産に含められる場合があります。
①婚姻・養子縁組や生計の資本として贈与を受けたこと
②法定相続人が贈与を受けたこと
の条件をいずれも満たした場合には遺産の先渡しと判断され、特別受益として遺産の中に含められることがあります。
【今回のケースで問題となるのは・・】
今回のケースで問題となる点とそれが特別受益になるかどうかの見解を記載すると次のとおりとなります。
①私立大学に進学し、私立の大学院を出ている費用負担
通常は親の子に対する扶養義務の範囲内として特別受益にあたらないとした裁判例があります。
しかし、他の兄弟との学歴の差が激しく、又、かかった費用が遺産の総額から見てもかなり多額になるよう場合には特別受益と判断される余地もあると思われます。
②地元に住んでいるお姉さんには、土地を買ってあげた行為
お姉さん名義で土地を買い、その費用をお母さんが出したというのであれば、生計の資本として贈与したことになり、特別受益として遺産に含まれることになります。
③姉妹で使用していたグランドピアノや二人が着用した100万近い振袖、お姉さんに買った15万の着物
二人で使用したことや、生計の資本とはいいがたいことから、特別受益にはなりません。
④姉の娘に買ってあげる30万以上のお雛様
お姉さんの娘に買うのなら、法定相続人でない人に対する贈与であり特別受益にはなりません。
又、生計の資本ともいえないのでその点からも特別受益になりません。
【今、何をするべきか】
お母さんがお姉さんには優しくしており、贈与をしているのについて、不満をお持ちかもしれません。
お母さんが生きている限り、お母さんの財産はお母さんが自由に使えるのであり、あなたとしてはその点を十分に理解しておく必要があるでしょう。
不満をお母さんにぶつけても、お母さんの機嫌が更に悪くだけで、決してあなたのためにはならないでしょう。
ただ、相続の場面になると特別受益の問題が発生します(その相手はお姉さんです)ので、お母さんがいつ、誰にどれだけの贈与をしたかをきちんと把握しておく必要があります。
又、お母さんがどの金融機関のどの支店に預貯金を持っているのか、しっかりと確認し、将来の遺産調査に備えておく必要があるでしょう。