【質問の要旨】
不動産評価額に同意したが撤回したい。
当方の評価額も考慮してもらいたいが、今から撤回することは可能か?
【ご質問内容】
弟に生前贈与された不動産の評価額を決める時に頭がボーとしていて弟が出した額に同意してしまいました。
著しく私の不利になる金額だったのに合意してしまいました。
撤回してやはり私の評価額も考慮してもらいたいのですが、今から撤回することはできますか?
合意したことをとても後悔しています。
主張書を提出しようと思っていますが、裁判官にどうすれば私の主張を聞いてもらえるでしょうか?
どうぞアドヴァイスをお願いいたします。
【どの段階でどういう同意をしたのかで撤回の可否が異なります】
裁判や調停、交渉などは一連の手続きですので、一旦した合意を尊重し、その上に更なる手続きが進められます。
そのため、原則として同意の撤回は信義則に反する(相手方の信頼を害する)ということになります。
ただ、法的に撤回が認められるかどうかは、それぞれのケースに従って異なります。
ご質問には、裁判官や主張書面などという言葉が出てきますので調停又は裁判をされているのかもしれません。
もし、そうであれば、どの段階でどのような形で合意したかによって、あなたのとる対策も異なってきます。
又、交渉中であっても、どの場面でどのように合意したのかにより、撤回の可否が異なってきます。
以下、場合に分けて説明をします。
【裁判所での和解の場合】
もし、裁判所での和解の過程で金額を合意したが、まだ和解条項を読み上げて和解成立という段階まで至っていないというのであれば、次の和解の機会に、前回(あるいはそれ以前であっても)、不動産価額には一旦同意したが、その後、考えてみるとどうしても納得できないということで、同意を撤回することも不可能ではありません(ただ、裁判官の機嫌が悪くなるのはご承知ください)。
なお、調停で同じ状況にある場合も、同様の対応をすることになります。
ただ、裁判官が和解条項や調停条項を読み上げて、和解又は調停が成立してしまっているのであれば、撤回は難しいです。
【裁判での主張書面での同意】
次に、裁判所に出した主張書面(準備書面)の記載で同意した場合、自分に不利益なことを認めたことになります。
このような同意を撤回したいというのであれば、事実に反し、かつ錯誤により出たものであるということを裁判所に説明する必要があります。
具体的には、その同意した価額が時価に反して著しく低廉であることを何らかの方法(例えば路線価額での算定や不動産鑑定士の鑑定書)で明らかにするとともに、あなたが同意した理由なども間違っていたという説明をされるといいでしょう。
【遺産分割協議書での同意】
あなたが不動産の評価額に同意した内容の遺産分割協議書を作成したというのであれば、遺産分割協議書という重要な書面に実印を押捺し、かつ印鑑証明書まで渡していることになり、確定的な意思表示をしているということになります。
そのため、同意の撤回は難しいでしょう。
【交渉の中での同意】
裁判や調停とは関係のない、単なる交渉の中であれば、同意の内容を双方が署名捺印して合意書のようなものとして書面化されていない限り、同意を撤回することは不可能ではありません。
但し、このような場合には間違いなく相手方から不信感を持たれ、その後の交渉が難しくなるということはご理解ください。
【早急に弁護士と相談する必要がある】
どの場面でどのような合意をしたのかが具体的にわからない限り、対応策を打ち出せません。
もっとも、遅くなればなるほど、撤回は困難になります。
そのため、早急に弁護士と相談され、具体的な事実を説明して、対応方法について弁護士の意見をお聞きになることをお勧めします。