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実例Q&A

相続手続きをしようとせず相続財産を独占するのは窃盗罪?【Q&A №680】

2020年7月10日

【質問の要旨】

・相談者の父が死亡。相談者は、父と前妻との間の子。遺言はない。

・父の後妻が財産(持ち家)に住み続け、相続手続きをする意思がない。

・後妻は、相続財産を自分だけのものにしているので、「窃盗罪」にならないか?

 

 

 

 

【回答の要旨】

1.窃盗罪は成立しない

2.遺産分割は遺産分割調停など民事手続きで解決すべきである

 

【ご質問内容】

父は前妻(私どもの母)が死亡したので、後妻をもらいました。

その父が、亡くなりました。

しかし、後妻は、前妻との間の子供3人を無視して相続手続きをする意思がまったく無く(もう何年も経っている)、そのまま父の持家一軒家に住み続けております。

これは、全ての父の相続財産を実質一人で所有していることになります。

そして、私たちは相続の権利を害されています。

父の遺書・遺言は有りません。

窃盗罪とは『他人が所有権を持つ財産的価値があるものを意図的に持ち去る、もしくは自分の所有物として扱い、一般的に利用されるように使おうとすることで問われる罪』です。

よって、後妻の行動は窃盗罪にあたると思うのです。

申し遅れました、私は、前妻との間の子供3人の中の1人です(父は後妻とは子供なし)。子供は3人とも、上記のように思っております。

そこで、窃盗の被害届を出そうと思いますが、如何でしょうか。

それとも、私たちの考えの方が間違っていますでしょうか。

ご教示いただけると幸いです。よろしくお願いします。

 (為す術が無く悩んでいる子供3人)


 ※敬称略とさせていただきます。

 

1.窃盗罪は成立しない

窃盗罪は、刑法第235条に「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。」と規定されており、万引きや空き巣などの場合が典型的です。

そして、「窃取」とは、判例上「占有者の意思に反して財物に対する占有者の占有を排除し、目的物を自己または第三者の占有に移すこと」と定義されています。

つまり、「窃取」したと言えるためには、占有(財物を事実上支配している状態)の移転が必要となります。

本件では、後妻は父の生前から父と二人で父の持ち家に住んでおり、父が亡くなってからも後妻は引き続き父の持ち家に住み続けています。

そのため、後妻は他の人が占有している物をその人の意思に反して自己のもとに移している訳ではありません。 

よって、占有の移転はなく、「窃取」したとはいえないので、窃盗罪は成立しません。

あなたが警察に被害届を出したとしても警察は受け取ってくれないでしょう。

この問題を解決するためには、以下の通り、遺産分割の調停を申し立てることをお勧めします。

2.遺産分割は遺産分割調停など民事手続きで解決すべきである

被相続人(亡父)が遺言書を残さなかった場合には、相続人全員での遺産分割協議が必要となります。

遺産分割自体をいつまでにしなければならないという具体的な制限はありませんので、父が亡くなってから何年経過していても遺産分割をすることは可能です。

しかし、父の後妻が遺産分割協議に応じてくれないのであれば、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てて、調停での話し合いによる解決を図るべきでしょう。

調停による話し合いの解決がむずかしい場合(若しくは相手方が代理人も立てず、期日を欠席する場合)には、遺産分割審判で裁判官に遺産分割方法を決定してもらうことも可能です。

なお、仮に父の遺産が他にあるような場合であっても、父の他の遺産が判明しないのであれば、先に父の持ち家のみを遺産分割することも可能です。

また、父の預貯金や株式が残っていそうであれば、10年前までは取引履歴等の取り寄せが可能なので、預金や株式等の遺産を調査し、それらの遺産も含めて遺産分割ができる可能性があります。

そのため、父の預貯金等が見つかりそうであれば、出来るだけ早く遺産を調査して調停を行うことが望ましいです。

ご自身で被相続人の遺産の調査や遺産分割調停・審判手続きが難しい場合は、弁護士など専門家に依頼するのが良いでしょう。

(弁護士 石尾 理恵)

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