3年ほど前に死亡した祖父の財産をめぐり、長男(後妻)と女3姉妹が対立しています。
長男は、生活費や離婚の慰謝料も全て祖父の財産からだしてもらっていました。
最近、「祖父の総財産を長男のものにすることに同意せよ」と弁護士を同行し、長女の家に出向きました。
祖父の財産は、ほとんどありませんが、死亡する前に1600万円の通帳があったことを長女が覚えており、長男の強行手段に黙認していた財産を姉妹にも当分するように申し出たところ、争いになりました。
3ヶ月たっても相手弁護士からの連絡はありません。
①相手方が申立などをせず、時間がたつことでの姉妹側のデメリットはなんでしょうか?
②施設のミスで骨折した祖父は、死ぬまで介護施設がつけた家政婦の世話になり同施設で入院しました。
かかる世話につき、後妻が祖父の面倒を見なかったと姉妹に対して損害賠償請求をするとのこと。
対策はありますか?
③3女には現在、土地の上に居住建物がありますが、世話になったということで、生前、祖父と公証役場にいき、土地を3女に譲る旨の公正証書をかいてもらいました。
かかる土地が長男にとられることはありませんか?
ちなみに、長男も土地と建物を名義は祖父のままもっています。
【長男が遺産分割の手続きを進めない理由】
まず、長男が遺産分割の申立をしない理由を述べておきましょう。
遺産分割の申立をすれば、分割割合は、長男と姉妹3人が4分の1ずつになり、長男は遺産の全部を独り占めすることができません。
又、長男は生活費等をもらっていたというのですから、これが特別受益だとして、長男の取得する相続分がさらに減少することもあります。
父が「1600万円の通帳」を持っていたなら、その預金は遺産分割の対象になるというのも、申立をしない理由と考えられます。
預金を、長男が勝手に引き出したのであれば、他の相続人は長男に対して、相続分に応じて返還を求めることができます(この返還を求める権利を不当利得返還請求権といいます)。
もし、長男が、遺産分割の手続きをするのであれば、遺産内容を明らかにせざるをえません。
その場合、長男としては、自分が使いこんだ預金のことが明らかになれば、その返還を迫られることになります。
長男が、遺産分割の申立をしない理由はそのあたりにありそうです。
【遺産分割しないで放置することによる姉妹側のデメリット】
まず、不当利得返還請求権は、長男が払い戻しをした時から10年で時効にかかりますので、姉妹は返還請求ができなくなります。
次に、不当利得返還請求するには、長男が勝手に預金の払い戻しをしたということを、姉妹側で証明する必要があります。時間が経てば経つほど、証明は難しくなります。
もし、姉妹が遺産をちゃんと分けて欲しいと考えているなら、少しでも早く遺産調査をし、遺産分割の手続きをする必要があります。
【長男の妻からの損害賠償請求への対策】
姉妹が兄弟の看病をせず、家政婦を雇ったことを理由に、長男の妻が賠償請求訴訟をしたというような話は聞いたことがありません。
心配することはないでしょう。
長男の妻が介護したことによって、ヘルパーを雇わずに済んだというのであれば、ヘルパー分の費用分だけ財産が減らないようにしたと長男(と一体であるその妻)が言い出すかもしれません。
その分、遺産が減らなかったのだから、遺産を余分に長男に渡せと主張してくることが考えられます。(これを特別寄与の主張といいます)
しかし、この主張は遺産分割手続の中で、遺産の分配を多くして欲しいという場合にすることであり、遺産分配の配分の問題にすぎません。
【土地をもらった3女の立場】
3女が、父から土地をもらったということであれば、遺産から財産分けをしてもらえない場合があります(特別受益という問題です)。
又、もらった土地の価額が、遺産に比べて、かなり多額の場合には、他の相続人から、もらいすぎだから、一部を返還せよという請求(遺留分減殺請求の問題です)を受ける場合もあります。
ただ、本件の場合がどのようになるかは、もらった土地の価額や遺産の総額などを考えないと結論がでませんので、弁護士と相談することをお勧めします。
なお、3女が登記をしていないのであれば、この点も弁護士と相談し、早急に登記を移転するように手続きを依頼することをお勧めします。