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実例Q&A

★遺産分割協議後の取引履歴開示請求【Q&A №342】

2014年1月29日


 

12年前に父が亡くなり、兄の言葉だけを信じて遺産相続協議分割書を作成して相続は済みました。

しかし、ここへ来て実家を手放すと言っております。兄は金がないと言ってますが、不動産収入もありそんな訳はないと思っています。

そこで、父の亡くなった頃からに遡って、当時の父の預金通帳の開示を銀行に求めましたが、遺産協議分割書にサインした事で遺産相続者全員のサインがないと、開示出来ませんと言われました。

つまり、相続が終了した段階で父の預金通帳も兄の通帳に名義義変更されたからと言う事らしいですが、そうなのでしょうか?

仮にそうだとしても、相続前の父の預金通帳を知る権利すらないと言う事なのでしょうか?

また、弁護士が入ればお見せする事も出来るような事も言っておりました。

そこも道理がいかないと思いましたが、弁護士のご意見をお聞かせ下さい。

また 実家土地は兄の名義ですが、建物は母親の名義なので勝手に処分は出来ませんが、母共々大変困っております。

それから、税務署にて約12年前の相続税申告書を確認出来ますか?

生命保険の受取人は被保険者によって定められていると思います。

被保険者の死亡後では勝手に変更など出来ないと思い筈ですが、亡き父の生命保険がどうなってしまったのかと母と問題になっています。

父の生命保険の受取人が誰だったのか?そして、母だった場合に勝手に受取人を変更する事など出来るのでしょうか?

記載内容  分割前 分割後 弁護士会照会 取引履歴の開示 生命保険の受取人変更

(仕置き人)

 


※同じ方から2回に分けてご質問をいただきましたが、回答は1つにまとめています。

【預金口座の取引記録(履歴)の開示に関する判例】

《遺産相続を争っている相続人の一人が、他の相続人の同意なしに被相続人の預貯金口座の履歴(入出金記録)の開示を求めることができるか》という点については、平成21年1月に《全員の同意がなくても金融機関は開示に応じる義務がある》との最高裁の判例が出ています。

従って、あなたが請求すれば、お父さんの取引履歴は開示されるというのが原則です。

【金融機関に開示を拒否する理由があるのか】

本件では、既に12年前に遺産分割協議が終了しているようですが、その遺産分割で、お父さん名義の預金は誰が取得することになったのでしょうか。

もし、お兄さんがお父さん名義の預金を取得することになった場合、お兄さんとしては

① お父さん名義からお兄さん名義に名義変更したのか

② お父さん名義の預金を解約して、お兄さんが払戻し額を取得したのか

のいずれかの方法をとるでしょう。

もし、上記のうち、①の方法をした場合、その口座はお兄さんの名義の口座になり、お兄さんの同意がないと開示はできないと金融機関が主張するかもしれません。

ただ、お兄さんの口座というのであれば、ご質問にあるような《相続人全員の同意》が必要なのではなく、お兄さんだけの同意でいいと思われます。

又、お兄さんの意思とは関係なしに《弁護士なら開示する》というのもおかしいでしょう。

更に言えば、お兄さんの口座を明らかにせよというのではなく、お父さんの名義であったころの取引履歴のみを明らかにせよといっているのですから、前記判例の趣旨からいえば、相続人一人の請求でお父さん名義の口座の履歴は開示するべきでしょう。

いずれにせよ、金融機関の対応は不当というしかありません。

ただ、金融機関の口座管理上からいえば、お父さんの口座は現在では存在せず、お兄さん名義になっているため、お父さん名義の口座検索では該当がないという可能性はあります(しかし、それなら《弁護士の照会なら回答する》ということもおかしいでしょう)。

ただ、参考までにいえば、前記の判例にかかわらず、一部の金融機関は相続人全員の同意が必要だと、今でも主張して、開示を拒否しています。

【お父さん名義の預金口座を解約し、払戻しを受けている場合】

通常の場合、遺産分割では、前項の②のように、お父さん名義の預金を解約して、その払戻金を分割あるいは単独相続する場合がほとんどです。

その場合には、お父さん名義のままで他人名義にはなっていませんので、前記判例によれば、開示をする必要があります。

従って、この場合も、金融機関の開示拒否は不当ということになるでしょう。

【現実的な対応としては弁護士に依頼するのも一方法】

金融機関は《弁護士であれば開示する》ということですが、弁護士照会をかけることを前提としているのでしょう。

これは、弁護士であれば、弁護士会を経由して金融機関に照会をかけることができ、その場合、公私の団体は回答義務があります。

この制度は一般に弁護士会照会と呼ばれ、我々弁護士が職務上様々な役所や金融機関に問い合わせて事実関係を調査するために法律上認められた権限であり、一般の方には使えない弁護士特有の調査方法です。

この制度を使った場合には、正当な理由なく回答を拒否できないことから、金融機関の方が「弁護士が入れば」という発言をされたのではないでしょうか。

あなたが、なぜ12年も前の遺産分割の前提であるお父さんの取り引き履歴を調査するのか、質問だけでは明らかではありませんが、もし、将来、訴訟を考えているのであれば、この際、弁護士に依頼し、弁護士照会をかけてもらうのも一方法です。

ただ、遺産分割を争うメリットとデメリットを相談される弁護士に確認されたうえで、弁護士照会を利用するかどうかを判断されるといいでしょう。

【税務申告書の保存期間は10年】

最後に相続税の申告書については、最近は、相続人であれば開示してもらえます。

但し、相続税の申告書の保管期間は一般に10年と言われていますが、今回のケースでは12年前の申告であり、10年を経過しています。

念のために保管しているのかどうか、又、開示してもらえるかどうかを実際に管轄税務署に確認されるといいでしょう。

【生命保険の受取人の変更はしないはずだが・・】

通常、生命保険会社が被保険者の死亡後に受取人を変更することはありません。

法的に見ても、(死亡保険金であれば)被保険者が死亡した時点で受取人(に指定されていた人物)が保険金給付請求権を取得すると考えられますので、いったん発生した権利を、後から別の誰かが勝手に変更できるということ自体が、理屈の通らないものといえるでしょう。

もし、納得がいかないのであれば、問題となる生命保険につき、保険会社に照会をかけ、保険契約者は誰か、被保険者は誰か、受取人は誰かを確認し、特に受取人の変更があったのかどうか、あったとすればその手続き関係の書類を取り寄せするといいでしょう。

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