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実例Q&A

被相続人の生前に預金の使い込みをしてしまった【Q&A №679】

2020年6月1日

【質問の要旨】

・相談者の母が、相談者の祖母(認知症、存命)の預貯金を使い込んだ(金額不明)。

・母の兄夫婦と平和的な解決をしたい。

質問①預貯金を使い込んだ側の案件でも受任してもらえるか?

②どのような解決方法になるのか?

③弁護士費用は?(使い込んだ金額は不明)

 

 

 

 

【回答の要旨】

1.祖母の存命中は、法律上、兄との間で解決はできない。

2.祖母の認知症が軽い場合は、生前贈与や債務免除をしてもらう。

3.認知症がひどく、判断能力がない場合には打つ手がない。

4.生前、祖母と母とで話ができていた場合には、兄に渡す遺産は少なくてすむ。

5.母と祖母が生前に何らの協議ができなかった場合は祖母の返還請求権が相続財産となり、母と兄に2分の1ずつ相続される。

6.遺産分割事件なら弁護士に依頼することはできる。

 

【ご質問内容】

初めまして、こんにちは。

いくつかご質問させて頂きたくメールにてご連絡させて頂きました!

「預貯金の使い込み(預貯金を引き出した側)」についての質問です。

【人物】

祖母(存命) ― 兄・妹(母) ― 娘(このメールを打っている私です)

【経緯】

①私の母が認知症の祖母の預貯金を介護費以外でも引き出し、個人的に使ってしまった。

②長きに渡り引き出し使用してきたので使用額が不明だそうで、おそらく数百~数千万はいっていると考えられる。領収書やレシートなどの証明書類も無い。

③裁判には出来るだけ発展させたくなく、兄夫婦とは正当な金額の還元および交渉などの平和的解決で納めたい。

【質問】

・預金を使い込んでしまった側の対応が一切わからないのですが、引き出した側の案件でもお引き受けして頂けるのでしょうか?

・また、その場合大まかなルートとしてどういった行動を取り、解決していくのでしょうか?

・そして今回の場合、ご依頼金はどのくらいを考えておけばよろしいでしょうか?(母の引き出し金額が不明だということを前提にしたご依頼金額・報酬金額が知りたいです。)

ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんが、簡単で構いませんのでもしよろしければお教え頂けますと幸いです。

何卒よろしくお願い致します!

(緑茶)


 ※敬称略とさせていただきます。

 

1.祖母の存命中は、法律上、兄との間で解決はできない。

母が祖母の預金を使いこんだのですから、祖母の生前はこの2人の問題であり、兄は関係ありません。

兄が登場するのは、祖母が死亡した後で、法定相続人としてです。

2.祖母の認知症が軽い場合は、生前贈与や債務免除をしてもらう。

祖母の認知症が軽く、十分に判断ができる状態なら、《預貯金から引き出されている〇〇〇〇万円は私が贈与しました》とか、《返還債務は免除する》という一筆を書いてもらうといいでしょう。

なお、祖母がその気になってくれるのなら、母に遺産を全部相続させるという遺言書を書いてもらうといいでしょう。

3.認知症がひどく、判断能力がない場合には打つ手がない。

祖母の判断能力がない場合には、成年後見人を選ぶことも考えられますが、後見人が生前贈与を認めたり、債務免除することはできませんので、祖母の生前に平和的解決は無理でしょう。

4.生前、祖母と母とで話ができていた場合には、兄に渡す遺産は少なくてすむ。

祖母が死んだとき、母と兄は相続人になり、遺産をどのようにわけるかという問題になります。

生前贈与か債務免除を祖母に書いてもらえれば、特別受益の問題になります。

生前贈与などをしてもらった分は、母の特別受益になります。

この場合、この使い込み額は遺産に持ち戻して、遺産分割協議をしますが、母の使い込み額が多額であっても、母は兄に返還義務はありません(Q&A №406をご参照ください)。

ただ、兄のもらえる分が少なく、持ち戻し分を加算した遺産総額の4分の1ももらえないというのであれば、兄としては遺留分を請求するという展開になると思われます(「相続法改正9 遺留分制度に関する見直し」をご参照ください)。

5.母と祖母が生前に何らの協議ができなかった場合は祖母の返還請求権が相続財産となり、母と兄に2分の1ずつ相続される。

債務免除がない場合、祖母の母に対する不法行為などの損害賠償請求権は、祖母が死ぬと、祖母の財産となり、その請求権の2分の1を兄が取得します。

よって、兄はその請求をしてくるでしょう。

6.遺産分割事件なら弁護士に依頼することはできる。

弁護士としては、祖母の生前に依頼を受けても、動ける余地が少ないと判断する可能性が高く、私なら、おそらく依頼を断ります。

ただ、祖母の死亡後なら、仮に生前の使い込みがあったとしても、相続がらみの事件ですので、問題なく依頼を受けます。

弁護士費用は、弁護士により異なりますが、仮に問題となる使い込みが3000万円とすれば、着手金は159万円が相場でしょう。

解決として2000万円を支払ったというのであれば、経済的利益(支払いを免れた金額)は1000万円となり、事件解決時に支払う報酬は118万というところが相場でしょう。

(弁護士 大澤龍司)

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