公正証書遺言の遺言執行者とその代理人弁護士との間で遺留分減殺請求の交渉をしていますが共同相続人の一人である遺言執行者Aが強気の為、交渉が難航しています。
この公正証書遺言を無効に出来れば一機に遺産分割の進展が望めると思い相談いたします。
民法891条(相続人の欠格事由)では、遺言を無効とする5項目を定めておりますが4項の脅迫や詐欺により遺言が無効とされた判決事例を教えて下さい。
【当事務所の使用している判例検索システムでは参考判例は見当たらない】
民法891条は「相続人となることができない」者(相続欠格者)を列挙していますが、その4号に、「詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者」が記載されています。
ご相談の内容は、詐欺・脅迫によって遺言がなされた場合、その詐欺・脅迫をした者を相続欠格者として遺言の効力を否定するような案件が問題となった判例はないかというものです。
結論から申し上げれば、当事務所が使っている第一法規の判例検索システムで検索しても、詐欺・脅迫と相続欠格が問題となった判例は出てきませんでした。
また、当事務所でも同種の争点が問題となる案件を扱ったことはありません。
【参考までに】
今回の質問では《公正証書を無効》にする手段として、相続の欠格事由が使えるかどうかを検討されています。
しかし、相続の欠格とは、ある相続人の相続資格を否定するだけであり、公正証書遺言自体を無効にするものではありません。
もし、公正証書自体を無効にしたいのであれば、相続人として(被相続人が有していた)詐欺・強迫による取消権を相続で取得したとして、その取消権を行使するという方法も検討の余地があります。
参考までに付言しておきます。
※本件には直接関連しませんが、相続欠格については昭和63年の仙台地裁の判決がありましたので、「【判例散策】昭和63年5月31日 仙台地裁判決」で解説しています。