【質問の要旨】
他の相続人による不正出金を取り戻せるか
【ご質問内容】
母が2月に亡くなりました。
母は不動産収入があり、毎月必ず47万ほどの収入が郵便局の口座に振り込まれています。
母は、2013年10月に脳梗塞で倒れて、その後は認知症のため判断能力がなくなり、弟と姉が郵便局の現金口座を管理していました。
老人施設に入ったために、毎月20万から22万くらいの費用がかかりました。
その分以外は、母は認知症で使いようがないので、そのまま残っているはずで、毎月毎月、47万から税金分を引いて、32万円。
そこから22万円かかっても、毎月10万円ずつ、2013年11月から2017年1月まで38ヶ月間で、380万円。
プラス年間でで80万円が不動産の管理会社より入金がありますから240万円プラス。
合計で620万ほどは、どう考えても残っていないとおかしいし母自体が施設で寝たきりの生活でもちろん現金を使うことはできないのでおかしいはずなのです。
しかし、母が亡くなった後の現金が100万円にも満たないのです。
2013年10月の脳梗塞を起こす前を含めるとプラスで500万ほどは残っているはずで合計で約1000万円の相続になるはずなのです。
以上の件から、明らかに、姉と弟による不正な出金が明らかなことだと思います。
母の状態が脳梗塞で判断能力がなく、ほぼ寝たきりで介護施設での生活でした。
その上で後見人制度も利用せずに3年間いましたから。
今、母の口座のある郵便局に記録を申請していますが、この場合は、この本来あるべきはずの金額は取り戻していくことは可能なのでしょうか?
どういう手順で行うことがベストなのか知りたいと思い、メールさせていただきました。
よろしくお願い致します。
【お母さんの意思能力と出金との関係】
質問にあるように、お母さんに判断能力がない場合に預貯金が引き出されているのなら、その預金はお母さんの意思に基づかないものであるということはできます。
仮にお母さんに判断能力があっても、お母さんの意思とは関係なく出金されたのであれば、その出金は違法なものだといえます。
しかし、仮にそれらのような出金があったとしても、出金された金銭がお母さんのために使用されていたのなら、お母さんに損害はなく、不法行為にも、不当利得にもならず、その出金を返還せよという話にはなりません。
【使途不明金があるかないかを確認する】
そのため、まず、お母さんのためではなく、その他の目的でなされた出金があるかどうかを調査する必要があります。
これを知るためには、お母さんの口座について、どのようなものがあり、どのように入出金されていたかを金融機関に照会することになります。
現在、お母さんの口座のあるゆうちょ銀行に取引履歴の照会をされているようですが、それ以外に利用されていた金融機関があればその履歴の確認も必要でしょう。
入出金履歴の取り寄せができたなら、その内容を詳細に検討する必要があります。
個別に出金を点検して、お母さんのためとは思われない出金があるかどうかを確認していくことが必要です。
《本来あるべきはずの金額》とは、そのような検討の結果で判明するものです。
【使途不明金を誰が引き出し、何の目的で使ったかも確認する】
使途不明金(正確に言えば、お母さんのため以外に使用された金銭)があるのなら、その使途不明金を誰が引き出したかを確認するのが次の作業になります。
お母さんの預貯金通帳や取引印、キャッシュカードを誰が保管していたのか、カードなら出金したATMがどこに設置されたものであるかにより誰が出金したのかを推測できるでしょう。
【損害賠償請求権は相続される】
出金されたお金があり、そのお金がお母さんのために使われていないということなら、お母さんはその引出者に対して不法行為による損害賠償を請求することができます。
お母さんが亡くなった後は、この権利は相続人に相続されます。
今回の件で相続人が子供3人であるとすると、あなたはお母さんの持っていた損害賠償請求権の3分の1を相続しますので、出金者に請求をし、話し合いをされるといいでしょう。
【話し合いがつかない場合には調停を考える】
ただ、今回の問題のような不正出金については、円満な話し合いで解決するのはむずかしいことが多いです。
その場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を起こすことを考えるといいでしょう。
家裁の遺産分割調停は費用もそれほどかからず、又、調停委員も関与しますので問題が解決することも多々あります。
しかし、あなたの請求どおりになることは少なく、お互いが譲歩を迫られることも多いということも知っておかれるといいでしょう。
どうしても、あなたの考える請求額を全額もらいたいというのであれば、その場合には相続分に応じた不法行為に基づく損害賠償 請求訴訟を起こすしかありません。
この訴訟は素人の方には難しいので、相続に詳しい弁護士に相談されるといいでしょう。