亡くなった母方の祖父の遺産の件で相談したいことがあります。
アパート経営していた不動産を登記を変更し解体し売却するのだそうです。
母方は兄弟が5人いてわたしは1/10の権利があり、他の兄弟の方もおおむね認めていると代理人の方から連絡がありました。
それでみんなで集まり遺産分割協議書にハンコを押してほしいと言われたのですが、市の法律相談でハンコを押す際には全て終わってる状態まで待ってお金と交換で押した方がいいと言われました。
遺産分割協議書に1/10と記載があっても不動産が売却したらお金が振り込まれないなどトラブルはあるのでしょうか?
一応、代理人の方に皆さんで集まった日にお金はもらえるのでしょうか?と聞いたところ、その日は登記の書き換えだけで不動産物件の代金は後日、不動産屋から振込と言われました。
できればその日に欲しいといったところ物件を業者で安く売るということでよろしいですか?とすごく怒り口調で言われてしまい困ってます。
よろしくお願いします。
【何の必要があって、登記名義を変更をしなければならないのか?】
登記名義を変更するという流れで話が進んでいるようです。
しかし、どうして登記名義を移転する必要があるのでしょうか。
アパートの解体をするのであれば、相続人の全員の同意を得て、解体業者に依頼するだけの話であり、登記名義を移転する必要はありません。
登記名義を移転しないと、物件を業者に安く売ることになるというのも理解しにくい話です。
アパートには居住者がいて、出てもらう必要があるという場合もありますが、それは登記名義とは関係のない話です。
結局、登記名義を変更する理由が明らかではなく、質問の限度では、登記変更に応じる必要はないと思います。
【なぜ、売却費用が安くなるのか?】
解体して更地にしない場合、業者しか買わないから、値段が下がるということかもしれません。それなら、解体をすればいいだけの話です。
相続人全員がお金を出し合うか、特定の相続人にお金を立て替えてもらうかという、解体専門業者に支払う解体費用の工面の問題がありますが、登記移転の問題ではありません。
又、共有だから売却額が下がる、あるいは業者にしか売れないということもありません。
なお、相続人全員の意思を尊重していては、時間がかかり、その間、価額が下がるということも考えられなくもありませんが、しかし、相続人が多数いる場合には、その各相続人の意向を尊重するべきであって、ある特定の相続人が独断で売却先や値段を決定すること自体が問題でしょう。
【分割協議書の記載について】
「遺産分割協議書に1/10と記載があっても不動産が売却したらお金が振り込まれないなどトラブルはあるのでしょうか?」という質問ですが、弁護士的な発想からいえば、質問のケースでは、そのようなリスクもあると言わざるをえません。
分割協議書に売却代金を間違いなく支払うと記載してもらっても、それで売却代金の10分の1が間違いなくもらえるわけではありませんし、そもそも売却値段が適正であるかどうかも確認できないでしょう。
相続人が遺産分割協議で決定された債務を履行しなかったことを理由に遺産分割協議を解除することも考えられそうですが、判例(最判平成元年2月9日民集43-2-1)はこれを否定しています。
そのため、相続人の一部に名義を移転するのであれば、その登記移転の段階で、金銭をもらう(登記移転書類と引き換えに金銭をもらう)べきです。
質問の中で登場する《代理人》というのが一体、どういう地位や立場にある人かわかりませんが、もしあなたがその《代理人》と《対等に》交渉できないというのであれば、弁護士に依頼することも視野に入れるべきでしょう(弁護士に相談あるいは依頼するなら・・法テラス、滋賀弁護士会に連絡されるといいでしょう)。
間違いなくもらいたいのであれば、登記移転と引き換えにするしかない、遺産分割協議書の書き方の問題ではないということをご理解ください。