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実例Q&A

遺産分割協議を無効にできないか【Q&A №676】

2020年4月7日

【質問の要旨】

・長男の発案で、マンションを建設。ローンは父名義。

・父の死亡後は、母が相続。

・母の死亡後、長男が「ローンの返済にすべての財産がいる」と言ったため、
遺産分割協議書にサインしたが、ローン以上の遺産があったことが判明。

・遺産分割協議を無効にできるか?

 

 

 

 

【回答の要旨】

・遺産分割協議書にサインをすると、その内容が有効となる

・遺産分割協議を無効にするのは非常にハードルが高い

・ハードルは高いが、錯誤があったことの証拠を探してみる

 

【ご質問内容】

相続人の両親が生前、長男が固定資産税・相続税対策のために、マンションを建設することを考案した。

何十年後に元が取れると言って説得し、建設土地の名義人である父親にローンを組ませ、その後、母親が相続し、10年前母親が亡くなった後、長男がローンの返済に全ての財産がいると言って、長男がすべてを相続するという遺産分割協議書にサインをさせられる。

分割協議後の長男の贅沢な暮らしぶりやローン以上の資産が財産としてることが判明。

遺産分割協議を無効としたいのですが、可能でしょうか。

(syu)


 ※敬称略とさせていただきます。

 

【遺産分割協議書にサインをすると、その内容が有効となる】

たしかに、あなたには母の遺産のうち、自分の相続分に相当する分を相続する権利を持っていました。

それが、「長男にすべて相続させる」という内容の遺産分割協議書にサインをしたことにより、相続できなかったことになります。

ただ、あなたが既に遺産分割協議書にサインをして実印を押してしまったのであれば、その内容が有効であり、その内容が相続分からして妥当な分け方になっていなかったとしても、対外的には、「長男にすべて相続させる」という内容が有効になってしまいます。

【遺産分割協議を無効にするのは非常にハードルが高い】

とはいえ、遺産分割協議を無効にすることがまったく不可能というわけではなく、遺産分割の重要な事実について錯誤があった場合には、錯誤による無効が認められる場合もあります。

たとえば、白紙の遺産分割協議書にサインをさせられ、後で長男が内容を埋めて完成させた、という場合、白紙の遺産分割協議書にサインをしたということを立証できれば、無効になる可能性があります。

それ以外にも、長男から「相続財産はこれだけしかない」と虚偽の報告をされたために遺産分割協議書にサインをしたが、実は他の財産の存在を隠されていて、後で他の財産があることがわかったというような場合にも、無効にできる余地はあります。

ただ、この場合には、あなたの方で、長男の虚偽報告内容を立証する必要がありますし、あなたが遺産内容の確認を怠った場合には、あなたに重過失があると判断され、錯誤無効が認められない場合もあります。

【ハードルは高いが、錯誤があったことの証拠を探してみる】

以上の通り、いったん署名をして実印を押した遺産分割協議書を無効にするのは、非常にハードルが高いです。

今回のケースでも、長男が遺産に関する情報を独り占めしてあなたに確認できないような状態にし、遺産内容についてあなたに虚偽の事実を述べた事実を証明しない限り、無効にすることはできないと考えるべきです。

そのため、当時長男にどのような情報を与えられていたのか、当時知らなかった新しい財産としてどのような財産があったのかを踏まえ、上記の点を証明できる資料(当時のメールや遺産分割協議にまつわる書面など)があるかを確認すべきでしょう。

(弁護士 岡井理紗)

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