【質問の要旨】
姉に言われるがまま印鑑を押して遺産分割をしたが、やり直せるか
【ご質問内容】
初めまして。インターネット検索をしていましたら、こちらのサイトにたどり着きました。
遺産相続の件で質問です。
両親の事なのですが、両親がネットができないので、代わりに私が質問致します。宜しくお願い致します。
父の母親が去年亡くなり、今年に入り遺産相続の件で、父の姉に呼ばれ 父と母で行ったそうです。
兄弟が4人居たので、揉めたそうです。
父の姉が全てをしきり、通帳も何も見せず いくら位あるとも言わず、個々で兄弟を呼びつけ、それぞれにお金を渡したそうです。
父は、他の兄弟がいくらもらったかは知らないらしく、家はそのお姉さんが貰うと言ったそうです。
父は、200万と言われて、それも、5年の分割払いにされてしまったそうです。
40万円×5年です。
父は穏やかな性格なので、何も言えずに、1回目の40万円だけ貰い帰ってきてしまい、母は嫁の立場で何も言えず、両親はやはり納得がいかない様子で、なんせ父の姉が、とても気が強くて、何も言い返せないそうです。
父は、家を出てしまったのですが、勝手に家を出て、文句を言うなら、10年家に居なかった分、亡くなった祖母にかかったもの全てを払え!と言ってきたそうです。
何だか両親が、可哀想で、こちらに相談させて頂きました。
印鑑は押してしまったようなんです。どうにもならないでしょうか。
アドバイス宜しくお願い致します。
【遺産分割協議書を作成したのかどうかが問題】
遺産分割協議をする場合には、書面でしなければならないとか、全員で一堂に会さなければならないというようなルールがあるわけではありません。
ただ、通常は、それぞれの相続人が何を相続するかという分割内容を記載した書面を作成し、相続人全員が実印を押して印鑑証明書を添付するという方法をとります。
そのような方法をとらなければ、銀行手続や不動産登記手続をすることができないからです。
本件では、お父さんは印鑑を押してしまったとのことですが、印鑑を押したという書類はどのような書類でしょうか。
また、実印を押して印鑑証明書も交付してしまったのでしょうか。
もしも遺産分割協議書に実印を押し、印鑑証明書を交付してしまっていたとすると、お姉さんから話を聞いた上で判を押した以上、内容も理解して納得していたはずだとみなされ、遺産分割をやり直すのは難しいといえます。
ただ、そうでなければ、きちんとした遺産分割協議をやり直し、その中で正当な相続分を主張すればよいでしょう。
【亡くなったお母さんにかかった費用請求には応じなくてもよい】
お姉さんは、「文句を言うならお母さんにかかった費用をすべて支払え」と主張しているようですが、このような主張は法的に無理があります。
「被相続人の財産の維持又は増加に特別の寄与をした場合」には「寄与分」が認められることがありますが、これには通常期待される程度を超える貢献が必要とされています。
親子間には扶養義務があり、なんらかの寄与があるのが通常であると考えられていますので、高額の医療費を負担したとか、ヘルパーを頼まなくていいくらい介護をしたとかいう特別な寄与をしていない限り、お姉さんの主張は通りません。
仮に寄与分が認められても、それはあなたのお父さんが返還するようなものではなく、遺産から寄与分と認定された額をもらえるにすぎません。
これらのことを考えると、あなたのお父さんが、かかった費用の、しかもその全てを支払う必要はないでしょう。
【まだ協議書を作成していないのなら、調査をして自己の相続分を主張すべき】
以上のとおりですので、もしもまだ遺産分割協議書を作成していないのであれば、お母さんの遺産の全容を明らかにし、相続分通りに分配するよう求めるべきでしょう。
その際、お母さんの遺産については、あなたもお母さんの相続人である以上、調査をすることは可能ですので、お姉さん任せにせずにあなたのほうできちんと調査し(調査の仕方についてはQ&A №98、Q&A №362等を参照)、遺産の全容をつかんだうえで交渉する方が良いと思います。
なお、遺産の調査が難しい場合やお姉さんが強硬な態度をとられた場合には、相続に詳しい弁護士に相談することをお勧めいたします。