【ご質問内容】
父の後妻がひとり暮らしをしていましたが、いつの間にか後妻の友人が任意後見契約をして、施設に入居させ、公正証書遺言も書かせていました。当時、後妻は認知症の症状があったようです。
その際、まわりには後妻には身寄りがないから、自分が後見人をやるしかない、と言っていたそうです。
実際には、後妻には兄妹もおり、義理の娘にあたる私もおります。
施設に入居して数年たちますが、任意後見受任者の方は、監督人選任の申し立てをしておりません。
これでは後見人とは言えないと思うのですが、通帳や印鑑はその受任者が管理しており、身内にみせてくれません。
先日、葬儀や納骨、死後事務のことを受任者に相談したのですが、なにやら態度がおかしくなりました。まるで後妻の死後、身内がくると困るかのようです。
任意後見契約のみで監督人がついていない状態の場合、
通帳や印鑑の管理(生前、死後通して)
葬儀や納骨、死後事務
を行う権限がその受任者の方にあるのでしょうか。
【ニックネーム】
きらら
【回答】
1,別途死後事務委任契約をしていなければ、死後事務を行うことはできない
本人が死亡をすると、任意後見契約が終了するため、任意後見人が死後事務(葬儀、納骨等含む)を行うことはできません。
そのため、後妻の友人が任意後見契約のみ締結しており、死後事務委任契約を締結していないのであれば、葬儀・納骨等の死後事務を行う権限はないでしょう。
2,通帳や印鑑の管理
生前の通帳や印鑑の管理については、本人が自己の意思に基づいて委任を行ったのであれば問題がありません。
今回のケースでは、友人が後妻から委任を受けて通帳や印鑑の管理を行っていることが考えられます。
ただし、後妻の認知症の程度が重度であるときは、意思能力がない可能性があります。
もし、後妻が委任をした時点で、意思能力がないのであれば、委任は無効ですので、後妻の友人が権限なく通帳や印鑑の管理を行っていることになります。
3.後妻の財産保全をする方法
今回のケースでは、後妻が認知症であり、その程度によっては意思能力がないことも考えられます。
そのような状態である場合には、後妻の財産保全の方法として、相談者の方から、成年後見の申立てを家庭裁判所に行うとよいでしょう。
裁判所に選任された後見人が財産の保全をしてくれます。
なお、成年後見の申立ては、4親等内の親族等であれば可能ですが、義理の娘である相談者は姻族1親等に該当し、申立てが可能です。
(ただ、この申立てには意思能力がないという医師の診断書が必要であり、果たしてこれが取れるのかどうかが問題になります。)
なお、相談者が成年後見申立てをした場合、後妻の友人が任意後見を主張することも考えられますが、その場合、その友人が任意後見人になっても、裁判所が後見監督人をつけます。
その監督人がつくことで、後妻の財産保全ができるでしょう。
(弁護士 山本こずえ)