事務所での
法律相談

閉じる

Q&A検索

閉じる

メール
無料相談

閉じる

実例Q&A

受遺者が相続放棄をした場合の遺言執行【Q&A №704】

2020年10月16日

【質問の要旨】

・父は長男に全財産を遺す旨の公正証書遺言を残し死亡した

・法定相続人の長男、二男ともに父の遺産を相続放棄した

・遺言執行者(相談者)は、遺産をどうしたらよいのか?

・次順位の相続人と接触する必要があるのか?

 接触が必要ならどのような方法をとればよいのか?

 

 

 

【回答の要旨】

・遺言執行者は遺言通りの内容を実現する役割

・遺言執行者に指名されたときは、遺言執行者に就任するか否か選択できる

・遺言執行者に就任しても、受遺者に相続放棄されると、遺言執行の対象になる事項がなくなり、任務は終了する

・遺言執行者から次順位の相続人に連絡をする必要はないけれども…

 

【ご質問内容】

法定相続人は長男と二男のところ、父は全ての遺産を長男に相続させるとの公正証書遺言を残し死亡しました。債務超過が明らかというわけではないのですが、父親の遺産を引き継ぎたくないとの意向で長男、二男共相続放棄しました。遺言執行人(私)としてどうすればよいのか、遺言作成に関わった公証人は相続させるべき相続人が放棄したのだから何もしなくてよいと言いますが、それでは遺産(貯金のみ)をどうしたらよいものか・・・

 次順位の相続人は第三順位の被相続人の兄弟や代襲相続人としての甥、姪ですが遺言執行者としてこの人たちと接触する必要があるのでしょうか。必要あるとすれば、どのような方法をとればよいでしょうか、ご教授ください。

 (まさ)


 ※敬称略とさせていただきます。

 

【遺言執行者は遺言通りの内容を実現する役割】

 遺言執行者は、遺言の内容を実現するために必要な行為をする権限を有していると同時に、義務を負っています。

 そのため、父が長男に全財産を相続させる旨の遺言書を残しているのであれば、遺言執行者は、父の全財産を長男名義に変更するために、不動産の登記名義を変更したり、預貯金口座の名義変更をするなどといった手続きをすることになります。

 

【遺言執行者に指名されたときは、遺言執行者に就任するか否か選択できる】

 遺言書において、遺言執行者として指定されていたとしても、それによって当然に遺言執行者に就任するわけではありません。

 遺言執行者として手続きを行うには、自らが遺言執行者となることを承諾するという手続きが必要になります。

 具体的には、あなたから相続人らや金融機関などに対して、「遺言執行者に就任しました」という連絡をすることが、就任を承諾したことになります。

 そのため、あなたが遺言執行者となることを承諾していなければ、そもそも遺言執行者に就任しなければよい話ですので、念のため相続人らに対し、「遺言執行者には就任しません」との連絡を入れておけば、その後は何もする必要はありません。

 

【遺言執行者に就任しても、受遺者に相続放棄されると、遺言執行の対象になる事項がなくなり、任務は終了する】

 もっとも、すでに遺言執行者となることを承諾し、手続を始めていたのであれば、あなたはすでに遺言執行者に就任していることになります。

 その場合には、本来は遺言執行者として、遺言書の内容を実現するべく、各種手続きをする必要があります。

 ただ、本件のように、遺言上、全財産を相続するはずの長男が、家庭裁判所の許可を得て相続放棄をしてしまった場合には、長男に財産を相続させることはできません。

 つまり、遺言執行者であるあなたが、遺言通りの内容を実現することは不可能となったということです。

 そのため、遺言執行者の任務は終了せざるを得ません。

 ただ、念のため、相続人全員に対し、「遺言において遺言執行者に指定され、職務を行ってきたが、受贈者が相続放棄をされたため、遺言執行は不可能となり終了しました」というような連絡をしておくべきでしょう。 

 

【遺言執行者から次順位の相続人に連絡をする必要はないけれども…】

 遺言執行者は、遺言の内容を実現する権限及び義務は有していますが、逆に言えばそれ以外の権限及び義務は有していません。

 そのため、次順位の相続人と連絡を取って、次順位の相続人に貯金を渡すというようなことはできません。

 したがって、遺言執行者のあなたとしては、遺産にはそのまま手を付けず、放っておくのが一番良いでしょう。

 ただし、第一順位の相続人であった長男及び次男は、相続放棄をしても、次順位の相続人が相続財産を管理できるようになるまでは、財産の管理責任を負います(民法940条1項)。

 そのため、遺言執行者のあなたではなく、長男及び次男の方からは、次順位の相続人に連絡したほうがよいといえるでしょう。

(弁護士 岡井理紗)

 

 

 

「その他」に関するオススメQ&A